新入社員が入社するシーズンで企業の悩みのタネとなるのが、「質問ができない」「報連相ができない」社員の存在です。「新入社員が自己判断で仕事を進め大きなミスをした」「新入社員が自分で問題を解決しようとして、何時間も業務を停滞させている」など、新入社員が仕事で質問しないことが原因のトラブルも少なくありません。だからといって、新入社員をきつく叱ったり、威圧的な態度をとったりすると、ますます新入社員が萎縮してしまいます。報連相ができる新入社員を育てるには、なんでも気軽に質問できる風通しの良い社内環境をつくることが大切です。本記事では、新入社員が仕事で質問できない心理について説明したうえで、その原因や対処法について解説します。
- 企業の新入社員が仕事で質問できない3つの理由
- 仕事で質問できない新入社員にどう対処する?4つの対策を紹介
目次
企業の新入社員が仕事で質問できない3つの理由
「質問ができない」「報連相ができない」新入社員が生まれる背景には、3つの要因があります。まずは部下や若手社員の心理を知ることが大切です。
1. ミスや失敗を恐れている
入社したばかりの新入社員に多いのが、ミスや失敗を恐れるあまり、上司や先輩社員に質問できないケースです。とくに入社したての時期に叱られたり、厳しい言葉をかけられたりすると、それ以上のミスを避けるため、新入社員が萎縮してしまいます。結果として、上司や先輩社員に怒られないために報連相をしなかったり、質問をせずに自分で問題を解決しようとしたりして、さらにミスを犯すという悪循環が生まれてしまいます。
2. 上司に対する遠慮や申し訳なさ
「上司に対する遠慮や申し訳なさ」も理由の1つです。新入社員に直接厳しい言葉をかけていなくても、上司や先輩社員が普段から忙しそうな様子を見せていたり、余裕がなさそうな態度をとっていたりすると、新入社員が「上司の時間を奪うのは申し訳ない」と感じてしまいます。その結果、質問を後回しにしてしまい業務が停滞します。業務量によっては難しいケースもありますが、忙しくてもなるべく態度に表さず、フレンドリーに新入社員と接することが大切です。
3. 正しい質問の仕方やルールを知らない
心理的には問題がなくても、そもそも新入社員が正しい質問の仕方やルールを知らず、うまく質問できないケースも少なくありません。「質問してみたものの聞きたい答えを得られなかった」「相手が忙しそうなときに質問し、怒られてしまった」という失敗体験の積み重ねが、質問できない新入社員を生む可能性があります。こういったケースでは、「質問をするタイミング」や「質問をする際に相手を気遣った言葉」、「聞く前に聞きたいことを整理する」など、新入社員に正しい質問のマナーやルールを教えることで問題解決につながります。
仕事で質問できない新入社員にどう対処する?4つの対策を紹介
それでは、仕事で質問できない新入社員にどう対処すればよいのでしょうか。新入社員が仕事でミスをしたからといって、すぐに感情的な指摘をするのはNGです。また、新入社員が気軽に上司や先輩社員に質問できるよう、社内制度や職場環境を整えるのも効果的です。質問できない新入社員への4つの対処法を紹介します。
1. 感情的な叱責をやめる
まずは新入社員に「遠慮させない」「ミスを恐れさせない」ため、感情的になって叱責している場合はすぐにやめましょう。自分の中で言語化できないために、感情的に声を荒立てて指摘してしまうと、新入社員を萎縮させてしまいます。その結果、新入社員のなかで自己防衛の心理が働き、上司や先輩社員の顔色を伺う主体性のない社員を生み出してしまいます。
新入社員がミスや失敗をしたときは、新入社員を頭ごなしに否定するのではなく、なるべく自己肯定感を高めるようなマネジメントが効果的です。「叱られたくない」「もうミスをしたくない」ではなく、「いい評価をもらえるようにしよう」「次は褒めてもらえるようにしよう」とポジティブな動機が生まれるようなコミュニケーションを心がけましょう。
また、小さなことであっても、新入社員に成功体験を実感してもらうのも大切です。「この前の資料、読みやすかったよ」といったように新入社員が行なった業務を具体的に伝えることで、自己肯定感を高めることにつながります。新入社員の自己肯定感が高まることで、自分から積極的にコミュニケーションをとってくれるようになります。
2. 報連相のルールを整備する
報連相のルールを整備し、マニュアル化して周知徹底することも、新入社員が気軽に質問しやすい職場環境づくりに役立ちます。たとえば、以下のような具体的なルールが効果的です。
- 30分悩んだら周囲の人に相談しよう
- タスクが終わったら、チームリーダーに報告しよう
- 就業時間になったら、上司へその日の進捗状況を報告しよう
新入社員に報連相のルールを守ってもらうには、まず上司や先輩社員が率先してルールを守る姿を見せることが大切です。こうした報連相のルールが徐々に浸透していくことで、新入社員の意識が変化し、自分から質問してくれるようになります。
3. フォローアップ面談を実施する
フォローアップ面談とは、入社後の区切りの時期に面談を実施し、新入社員の現状や思いを知るための面談です。上司との1on1面談と違い、フォローアップ面談は第三者の人事部門の担当者が面談を行うのが特徴です。3ヶ月後、6ヶ月後、1年後と、入社から時間が経つにつれて、新入社員は仕事やコミュニケーション上のさまざまな悩みを抱えます。とくにコミュニケーション上の課題を抱えている場合、自分から周囲に悩みを話せないケースも少なくありません。
そこでフォローアップ面談を実施し、新入社員の本音を第三者が直接聞くことで、職場環境の課題を把握できます。コミュニケーション上の課題を解決し、風通しのよい職場環境にすることで、新入社員が質問しやすい組織が生まれるでしょう。
4. ナレッジ共有システムを導入する
新入社員が心理的な面で問題を抱えていなくても、上司や先輩社員が業務に忙殺されていたり、リソース不足で質問に答える余裕がなかったりするケースもあります。とくに基本的な業務知識については、上司や先輩社員が直接答えるというよりも、新入社員が自己解決できるような仕組みを作ることが大切です。
そこで役に立つのが、「ナレッジ共有システム」です。ナレッジ共有システムとは、業務に必要な知識やスキルをWiki、データベース、FAQコンテンツなどの形式でまとめ、課題の自己解決を促進するためのシステムです。ナレッジ共有システムを導入することで、新入社員が基礎的な業務知識をすばやく習得でき、新入社員が本当に知りたいことを質問することができます。また、上司や先輩社員も部下からの質問に答える余裕が生まれます。新入社員の自己解決を促進するだけでなく、質問しやすい職場環境をつくるうえでもナレッジ共有は重要です。
【まとめ】
仕事で質問できない新入社員の心理を知り社内制度や職場環境の整備を
新入社員が仕事で質問できない背景には、「ミスや失敗を恐れる」「上司に対する遠慮や申し訳なさ」「正しい質問の仕方を知らない」の3つの要因があります。新入社員が質問しなかったからといって、きつく叱ったり、ネガティブな言葉をかけたりすると、さらに新入社員が萎縮してしまう悪循環に陥ります。新入社員が仕事でミスや失敗をしてしまっても、新入社員にとって次につながるような自己肯定感を高める言葉をかけましょう。また、報連相のルールの整備や、フォローアップ面談の実施、ナレッジ共有システムの導入など、新入社員が気軽に質問できる社内制度や職場環境を整えることが大切です。