新型コロナウイルスの影響を受け、テレワークやリモートワークが身近なものになりつつあります。パーソル総合研究所が新入社員を対象とした調査でも、2020年11月の時点で約半数の新入社員が「週3~4日以上」の在宅勤務を経験していることがわかっています。[注1]
しかし、テレワークにはデメリットもあります。とくに影響が大きいのが新人教育です。コミュニケーション機会の減少や、メンタルケアの難しさなど、多くの企業がテレワーク中の新人教育に課題を抱えています。この記事では、どうすればテレワーク環境でもストレスなく新人教育を実施できるのか、コツやおすすめのツールを紹介します。
[注1] パーソル総合研究所:新卒入社者のオンボーディング実態調査 調査結果(コロナ禍影響編)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/new-graduate_onboarding.pdf
目次
テレワーク中の新人教育の3つの課題
テレワーク中の新人教育の課題は3つあります。ほとんどの企業で見られるのが、「コミュニケーション機会の減少」という課題です。また、お互いの姿が見えないテレワーク環境ならではの「メンタルケアの難しさ」や、「教育効果や研修効果の低下」といった課題も挙げられます。
コミュニケーション機会の減少
テレワーク中での新人教育の課題の1つが、コミュニケーション機会の減少です。オフィスワークの割合の減少により、新人教育においても対面でのコミュニケーションが減少しています。実際にパーソル総合研究所の調べによると、「コロナ禍におけるオンボーディングで悪かったと感じたこと」として、新入社員の21%が「コミュニケーション不足」、14%が「同期とのコミュニケーション不足」を挙げています。[注1]
テレワーク環境において、いかに新入社員とのコミュニケーション機会を増やすかが新人教育の課題です。
新入社員のメンタルケアの難しさ
また、コミュニケーション機会の減少により、新入社員のメンタルケアも難しくなっています。パーソル総合研究所の調べによると、「在宅勤務による新入社員への影響」として、新入社員の46.5%が「研修・業務へのモチベーション低下」、35.1%が「孤独感・不安感といった精神的な負担感」を挙げています。[注1]
オフィスワークと違い、テレワークではわからないことを近くの社員に聞いたり、仕事の悩みを気軽に相談することができません。新人教育においても、新入社員が不満やストレスを溜め込みすぎないよう、メンタルケアに取り組む必要があります。
教育効果や研修効果の低下
新型コロナウイルスの感染予防対策のため、なるべく密を回避しながらOJTや研修を実施する必要があります。そのため、企業によってはOJTや研修を実施する機会の減少や、カリキュラムの削減により、教育効果や研修効果の低下が見られます。パーソル総合研究所の調べによると、「在宅勤務による新入社員への影響」として、47.9%の新入社員が「OJTや業務を通じた教育効果の低下」を実感していると回答しています。[注1]
テレワークやリモートワークの導入をきっかけとして、新人研修のあり方を見直すことが大切です。
新人教育をスムーズに行うための2つのコツ
テレワークやリモートワークでも新人教育をスムーズに行うため、オンラインでのOJTや研修に移行しましょう。また、上司や先輩社員とのネットワークを広げ、テレワーク環境でも定期的にコミュニケーションが生まれるような仕組みづくりが必要です。
オンラインでのOJTや研修に移行する
テレワーク環境でも新人教育を実施するため、オンラインでのOJTや研修に移行する企業が増えています。パーソル総合研究所の調べによると、コロナ禍前後で実施率が増加した研修形式、減少した研修形式は次の通りです。[注1]
実施年度 | 増減率 | ||
2018年~2019年 | 2020年 | ||
集合研修 (講義形式) |
75.2% | 49.3% | -25.9% |
集合研修 (グループワーク形式) |
75.8% | 42.2% | -23.6% |
オンライン研修 (講義形式) |
16.0% | 59.3% | +43.3% |
オンライン研修 (グループワーク形式) |
14.8% | 51.3% | +36.5% |
このように講義形式、グループワーク形式のいずれもオンラインでの研修機会が増加しています。テレワーク環境でもスムーズに新人教育をおこなうため、オンラインでの面談、OJT、研修などの機会を増やしましょう。
上司や先輩社員とのネットワークを広げる
新人教育の効果を高めるには、上司や先輩社員とのネットワークを広げ、テレワーク中のコミュニケーション機会の減少を防ぐことが大切です。パーソル総合研究所の調べによると、コロナ禍の環境変化により、新入社員の業務能力獲得に「良い影響があった」と回答した企業の多くが、コミュニケーション機会の増加に取り組んでいます。[注1]
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「良い影響」企業と「悪い影響企業」の実施率の差 | |
経営層とのコミュニケーション機会を増やした | +20.6% |
配属先の先輩とのコミュニケーション機会を増やした | +18.6% |
上司とのコミュニケーション機会を増やした | +17.6% |
他部署とのコミュニケーション機会を増やした | +8.5% |
同期とのコミュニケーション機会を増やした | +10.3% |
たとえば、「始業後や就業前に新入社員が先輩社員と情報共有する機会を設ける」、「1日5〜10分程度のミーティング機会を設ける」など、テレワーク中のコミュニケーション機会の増加に取り組みましょう。業務でわからないことや人間関係の悩みなども気軽に相談できるため、新入社員のメンタルケアにもつながります。
テレワーク中の新人教育に役立つ2つのツールを紹介
テレワーク中の新人教育に役立つのが、「コミュニケーションツール」、「ナレッジ共有システム」の2つのITツールです。それぞれのツールのメリットや、具体的な活用シーンについて解説します。
オンラインでやりとり可能なコミュニケーションツール
オンライン研修の実施や、テレワーク中のコミュニケーション機会の確保には、オンラインでやりとり可能なコミュニケーションツールの導入が必要不可欠です。新人教育に活用する場合は、お互いの表情を見ながらコミュニケーションをとれるWeb会議システムや、動画マニュアルを配信できる動画配信サービスなどのITツールが適しています。企業によっては、仮想空間でのVR教材を新人教育に活用するケースもあります。
社内ナレッジを蓄積できるナレッジ共有システム
ナレッジ共有システムとは、業務に役立つ知識やノウハウを一箇所に集約し、社内で共有できるサービスを指します。たとえば、業務に関するよくある質問(FAQ)をまとめたFAQ管理システムなどが挙げられます。ナレッジ共有システムを導入すれば、新入社員が業務でわからないことを自分で調べて解決できるため、新人教育をスピードアップできます。コミュニケーションツールとナレッジ共有システムの2つのITツールを組み合わせることが、テレワークにおける新人教育のポイントです。
【まとめ】
テレワークにおける新人教育の課題解決のため、ITツールの活用を
テレワークやリモートワークが急速に普及し、新人教育の環境が激変しました。コロナ禍も3年目に突入し、入社時からテレワークしか経験していない若手社員も少なくありません。テレワークにおける新人教育の課題は、「コミュニケーション機会の減少」、「新入社員のメンタルケアの難しさ」、「教育効果や研修効果の低下」の3点です。コミュニケーションツールやナレッジ共有システムなどのITツールの活用により、新入社員の定着をサポートすることが大切です。