厚生労働省の平成30年版労働経済白書によると、管理職としての悩みの上位二つは、いずれも部下との関係に関するものです。2020年に入ると新型コロナウイルスの流行が始まり、テレワークやリモートワークが増えた結果、部下とのコミュニケーションの機会がますます減少しました。[注1]
対面でのやりとりが減り、オンラインでのやりとりが増えるなかで、部下とどのようにコミュニケーションを取ればよいのでしょうか。この記事では、部下とのコミュニケーションが減っている理由や、新型コロナウイルスが流行している中でのコミュニケーションの取り方をわかりやすく解説します。
[注1]厚生労働省:平成30年版労働経済の分析
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/18/backdata/2-3-26.html
目次
部下とのコミュニケーションが減っている理由
なぜ部下とのコミュニケーションが減ったと感じる管理職が増えているのでしょうか。部下とのやりとりが減った原因の一つは、新型コロナウイルスの影響により働く環境が大きく変わったためです。また、管理職と部下の世代間ギャップが拡大していることも、部下と「話しづらい」、「ソリが合わない」と感じる原因となっています。部下とのコミュニケーション機会が減っている理由を三つ紹介します。
新型コロナウイルスの流行で飲み会の回数が減少した
まずは新型コロナウイルスの影響により、飲み会の頻度が減少した点が挙げられます。株式会社LASSICのアンケート調査によると、新型コロナウイルスの流行後に飲み会の参加頻度が激減し、「飲み会に参加しない」人の割合が約2倍に増加しました。とくに女性は飲み会に全く参加しない人の割合が高く、約3人に2人が「飲み会に参加しない」と回答しています。[注2]
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半年に 1回 以下 |
数カ月に1回 | 月に 1回 |
月に 数回 |
週に 1回 |
週に 数回 |
毎日 | 飲み会に参加しない | その他 | |
新型コロナウイルス流行以前 | 男性 | 8.8% | 17.2% | 18.4% | 16.8% | 9.2% | 5.0% | 0.4% | 24.1% | 0.2% |
女性 | 9.0% | 18.2% | 15.4% | 15.6% | 6.1% | 2.9% | 0.2% | 32.6% | 0.0% | |
新型コロナウイルス流行以後 | 男性 | 15.3% | 11.9% | 6.3% | 3.6% | 2.3% | 1.1% | 0% | 58.7% | 0.8% |
女性 | 14.5% | 9.0% | 5.9% | 2.7% | 1.0% | 0.2% | 0% | 66.4% | 0.4% |
このように新型コロナウイルスの流行で部下と飲みに行く機会が減った結果、コミュニケーションの機会を確保できず、部下との関係に悩む管理職が増加しています。
[注2]PRTIMES:新型コロナ終息後の「飲み会」参加、年代差が明らかに。20代、50代~60代の4割 参加に前向き。【飲み会に対する意識の変化に関する調査】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000055.000069473.html
テレワークやリモートワークで物理的な距離ができた
新型コロナウイルスがもたらした影響がもう一つあります。新型コロナウイルスの感染予防対策のため、テレワークやリモートワークを導入する企業が増加しました。国土交通省の調べによると、令和3年度のテレワーカーの割合は27.0%で、前年度の調査から4.0ポイント増加しました。[注3]
テレワークを導入すると、管理職と部下の間に物理的な距離が生まれ、対面でのやりとりが制限されます。ビジネスチャットツールやWeb会議システムなどを用いたオンラインでのやりとりに適応できず、新型コロナウイルス流行中でのコミュニケーションに苦労する管理職もみられます。
[注3] 国土交通省:令和3年度テレワーク人口実態調査
https://www.mlit.go.jp/toshi/daisei/content/001471979.pdf
世代間のギャップが拡大した
管理職の世代と部下の世代で、話し方やコミュニケーションのギャップが拡大したことも原因の一つです。世代間のギャップを考慮せず、部下とコミュニケーションを取った結果、人間関係がうまくいかない(距離をとられる)ケースは少なくありません。コミュニケーション機会を増やすだけでなく、新型コロナウイルスの時代に即したコミュニケーションの取り方を考えることが大切です。
部下とのコミュニケーションをうまく取る方法
それでは、どうすれば部下と円滑なコミュニケーションをとることができるのでしょうか。新型コロナウイルス流行中でのコミュニケーションのコツを二つ紹介します。
部下が相談しやすい環境づくり
まずは部下が気軽に相談しやすい環境づくりに取り組みましょう。新型コロナウイルス流行後は、コミュニケーションの中心が通話やチャットに移行しています。部下に「チャットでも気軽に質問していい」、「何回でも質問していい」とあらかじめ伝えることで、部下の不安を取り除けます。また、管理職側もチャットの返信を早くしたり、絵文字やスタンプを活用してみたり、話しかけやすい雰囲気を作り出すことが大切です。
仕事以外のコミュニケーション機会を増やす
テレワークやリモートワークでも、仕事以外のコミュニケーション機会を増やすことは可能です。たとえば、Web会議システムなどを利用し、オンライン飲み会を開催すれば、新型コロナウイルス流行以前と同様にコミュニケーション機会を確保できます。また、最近はコミュニケーションを増やすため、テレワーク中に昼食を一緒にとる「リモートランチ」を取り入れる企業も増えています。新型コロナウイルス流行中でも工夫をし、部下とのコミュニケーション機会を確保しましょう。
部下とのコミュニケーションが減ることによる問題
部下とのコミュニケーションが減少し、管理職の目が行き届かない場面が増えてくると、以下の三つのリスクが生じます。
- 部下のメンタル管理がうまくいかず、離職につながる
- 部下の進捗状況を把握できず、仕事のミスや手戻りが増える
- 人事評価の情報が不足し、手探りの評価になる
そのため、ビジネスチャットツールやWeb会議システム、グループウェアなどのデジタルツールを導入し、いつでもどこでも部下とやりとりできる環境を用意することが大切です。また、ナレッジ共有システムを導入する方法もあります。ナレッジ共有システムとは、業務の進め方やノウハウなどの情報を蓄積し、効率的に共有するためのツールです。ナレッジ共有システムがあれば、部下とのコミュニケーションが不足していても、業務の進め方を確認したり、ノウハウを学んでもらったりすることができます。コミュニケーション機会の確保が難しい場合は、ナレッジ共有システムの導入も検討しましょう。
【まとめ】
ナレッジ共有システムを導入し、部下とのコミュニケーション不足を補おう
新型コロナウイルスの流行により、対面でのやりとりが制限された結果、部下とのコミュニケーション機会が大きく減少しました。飲み会の頻度が減ったことや、テレワークの導入で物理的な壁が生まれたことにより、部下とのコミュニケーションの取り方に悩む管理者も少なくありません。部下とのコミュニケーションを改善する方法は二つあります。まずは通話やチャットで密にコミュニケーションを取り、部下が相談しやすい環境を作ることが大切です。また、リモートランチやオンライン飲み会など、仕事以外のコミュニケーション機会を増やすのもよいかもしれません。ナレッジ共有システムを導入すれば、部下とのコミュニケーション不足を補い、しっかりと情報共有を行うことができます。