従来のナレッジマネジメントは、Microsoft Excelなどのオフィスソフトを利用して行うことが一般的でした。Excelでのナレッジマネジメントは、新しい操作を覚える必要がなく、気軽にナレッジマネジメントを導入できるというメリットがあります。一方、Excelでのナレッジマネジメントを脱却し、クラウドサービスに移行する企業も増えてきました。Excelは本当にナレッジマネジメントに向いたツールといえるのでしょうか。この記事では、Excelでのナレッジマネジメントを行うメリットやデメリット、ナレッジ共有システムの必要性をわかりやすく解説します。
目次
Excelでのナレッジマネジメントを行うメリット
ナレッジマネジメントの第一歩は、有用な知見やノウハウを蓄積する仕組みをつくることです。Microsoft Excelをはじめとした表計算ソフトは、情報を効率的に入力したり、簡単な計算を自動化したりできるため、ナレッジマネジメントに向いたツールのひとつです。また、Excelはほとんどの企業で導入しているため、スムーズにナレッジマネジメントの環境づくりに取り組めるというメリットもあります。ここでは、ナレッジマネジメントをExcelで行うメリットを2つ紹介します。
新しい操作を覚える必要がない
Microsoft Excelは広く普及しており、ほとんどの企業で利用されている表計算ソフトです。Excelの操作に習熟した社員も多く、簡単な関数やマクロなら使いこなせる人も少なくありません。Excelでナレッジマネジメント用のシートを作成すれば、社員が培ったExcelスキルをそのまま活かすことができます。新しい操作を覚える必要がないため、ナレッジマネジメントを取り入れる前の導入研修の期間も短縮できます。
スモールスタートが可能
大手企業などでは、ナレッジマネジメントの導入にあたって専用のシステムを開発するケースがみられます。たとえば、富士通では1990年代にナレッジマネジメントの考え方を取り入れ、現場で働く社員の知識を蓄積するためのツールを独自に開発してきました。しかし、ナレッジマネジメントツールの自社開発には時間もコストもかかります。その点、Excelはすでに導入済みの企業が多いため、システム開発のコストがかかりません。また、従業員がシート上にナレッジを入力していく簡易的な仕組みであれば、ナレッジ共有システムの導入準備もほとんど必要ありません。そのため、スモールスタートでナレッジマネジメントに取り組むことが可能です。
Excelでのナレッジマネジメントを行うデメリット
一方、Excelでのナレッジマネジメントにはデメリットもあります。
- 複数人での情報共有に手間がかかる
- データ破損のリスクがある
- だんだんメンテナンスの工数が増える
Excelは複数人での情報共有に手間がかかるため、ナレッジの蓄積には適していますが、ナレッジの共有にはあまり向いていません。また、セキュリティ対策が行われたクラウドサービスと違い、データ破損のリスクがあるのもデメリットです。Excelでのナレッジマネジメントに悩んでいる人は、クラウドサービスへの移行も検討しましょう。
複数人での情報共有に手間がかかる
ナレッジマネジメントには、役に立つ知識を「蓄積」する側面と、社員同士で「共有」する側面の2つが必要です。しかし、Excelは複数人での同時編集に向いておらず、情報共有の面で不安があります。通常、Excelファイルは保護(ロック)されており、他の人が開いているExcelファイルを同時編集できないようになっています。複数人で1つのExcelファイルを編集したい場合は、「ブックの共有」機能を利用する必要があります。しかし、ブックの共有を行うと、Excelの標準機能の一部が制限されます。
- セルの結合や分割
- グラフの作成や変更
- マクロの記録や変更
- 表、図形、画像の挿入
- ハイパーリンクの設定
- 条件付き書式の仕様
そのため、普段行っている作業ができなくなり、複数人での情報共有に時間がかかる場合があります。
データ破損のリスクがある
Excelファイルには、データが破損したり、別のユーザーがファイルそのものを削除したりするリスクがあります。また、Excelファイルは簡単にコピーし、外部に持ち出すことができます。そのため、情報セキュリティの観点から、Excelで重要なナレッジを管理するのはおすすめできません。どうしてもExcelを用いてナレッジマネジメントを行いたい場合は、運用ルールを策定し、Excelファイルのコピーや持ち出しを禁止しましょう。
Excelでのナレッジマネジメントを行うときの注意点
Excelでのナレッジマネジメントを行う場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。ナレッジマネジメントを効率化するためには、ユーザーがノウハウを入力したり、共有したりしやすいインターフェースが必要です。既存のテンプレートを活用し、見やすいレイアウトデザインを意識しましょう。また、Excelには細かくアクセス権限を設定する機能がありません。運営ルールを明確にし、ファイルにアクセスできるユーザーを区別することも大切です。Excelでのナレッジマネジメントの注意点を3つ紹介します。
無料のテンプレートを活用する
Excelには、新規ブックを作成する際に、外部のテンプレート(ひな形)をインポートする機能が用意されています。Excelテンプレートの中には、無料で公開されているものも数多くあります。たとえば、ナレッジマネジメントに役立つExcelテンプレートの例として、共有すべき知識を質疑応答の形式でまとめたQ&Aシート(Q&A管理表)が挙げられます。これからExcelでのナレッジマネジメントを始める人は、既存のテンプレートを有効活用しましょう。
アクセスできるユーザーを明確化する
Excelファイルのアクセスを制限する場合、読み取りパスワードを設定し、シートを保護する必要があります。また、Microsoft Officeのバージョンによっては、セルの範囲を指定して編集を許可・制限することもできます。ナレッジマネジメント専用のツールと比較して、Excelにはアクセスできるユーザーを細かく設定する機能がありません。Excelを利用してナレッジマネジメントを行う場合は、運用ルールを策定し、Excelファイルを編集できるユーザーを制限しましょう。
ナレッジ共有システムへの切り替えも検討する
Excelでのナレッジマネジメントがうまくいかない場合は、ナレッジ共有システムへの切り替えがおすすめです。ナレッジ共有システムは、ナレッジの共有や蓄積に特化したツールで、社内WikiやFAQ管理システムなどが該当します。たとえば、FAQ管理システムを導入すれば、ナレッジをQ&Aの形式でまとめ、いつでもどこでも閲覧可能なクラウドで一元管理することができます。セキュリティ対策も充実しているため、機密性の高いナレッジを管理したい場合もおすすめです。
【まとめ】
Excelでのナレッジマネジメントを脱却し、専用ツールへの移行を
これまで、多くの企業がExcelを活用してナレッジマネジメントに取り組んできました。しかし、複数人での情報共有に手間がかかる点や、データ破損のリスクがあることから、Excelでのナレッジマネジメントを脱却する企業も増えています。ナレッジマネジメントを効率化するなら、クラウドサービスの導入がおすすめです。オンラインでアクセスできるクラウドサービスなら、蓄積したナレッジをいつでもどこでも閲覧し、業務に活かすことができます。テレワークの際にも、Excelファイルをわざわざメールでやりとりする必要がありません。Excelでのナレッジマネジメントに悩んでいる人は、専用ツールへの移行も検討しましょう。