コールセンターを運営するうえで重要視されるポイントは、大きく分けて「品質(応対品質など)」、「生産性」、「収益性」の3つです。それぞれにKPIを設け、顧客対応業務の現状把握や管理を行います。そのなかでも、コールセンターの生産性を数値化するのに役立つのが、「稼働率」と呼ばれる指標です。なぜ、稼働率を意識する必要があるのでしょうか。また、稼働率とよく似た「占有率」との違いはなんでしょうか。稼働率を適正に保つことが、円滑なコールセンターを運営するためのポイントです。この記事では、コールセンターの代表的なKPIである稼働率の意味や、稼働率を適正に保つための計算方法やコツをわかりやすく解説します。
目次
コールセンターの稼働率とは?オペレーターの生産性を表す指標
コールセンターにおける稼働率とは、一日の業務時間のうち、オペレーターが顧客対応などの業務を行った時間の割合を表す指標です。稼働率が高い場合、オペレーターの生産性が高く、オペレーターの人員配置が最適で、無駄な業務や待機時間が少ない理想的な状態だといえます。しかし、稼働率が高すぎる場合も問題です。オペレーターの業務負担が大きく、かえって生産性を損なったり、応対品質を低下させるリスクがあります。オペレーターのワークライフバランスを考慮し、適正な範囲で稼働率のKPIを設定することが大切です。
稼働率の目安は80%
コールセンター業務の国際基準品質保証規格である「COPC CX規格」によると、オペレーターの稼働率の目安は86%とされています。しかし、日本のコールセンターでは、オペレーターの疲労やストレスを考慮し、稼働率の目標を80%~85%程度に設定するのが一般的です。稼働率は高すぎても低すぎても問題です。コールセンターの多くで、稼働率が85%を超える場合は注意ライン、90%を超える場合は危険ラインとし、オペレーターのモニタリングを行っています。オペレーターのケアも考えつつ、コールセンターの生産性を管理する必要があります。
稼働率と占有率の違い
稼働率とよく似ている指標に、「占有率」があります。占有率は一日の稼働時間を分母として、オペレーターが顧客対応業務に従事した割合を表します。通常、占有率を計算するときは、顧客対応や後処理を行った「生産時間」のみを考慮し、それ以外の待機時間などは含めません。占有率の許容範囲は76%~87%とされており、稼働率と同様、高すぎたり低すぎたりする場合は、オペレーターの労働環境や生産性管理の方法を見直す必要があります。
コールセンターの稼働率の算出方法
コールセンターの稼働率は簡単な計算式で求めることができます。前項で述べた通り、稼働率は一日の業務時間を分母として、オペレーターが顧客対応などの業務を行った時間の割合を表す指標です。この業務時間とは、オペレーターへの給与支払対象となる労働時間を意味し、「生産時間」と「非生産時間」の2種類に分かれます。
生産時間 | ・通話時間、保留時間、後処理時間(A) |
非生産時間 | ・待機時間(B) ・研修、面談、ミーティングなどのその他の業務時間(C) |
つまり、生産時間は「顧客対応や後処理を行った時間」を、非生産時間は「待機時間やそれ以外の業務を行った時間」を意味します。上記の内容を踏まえると、稼働率は一日の業務時間(A+B+C)のうち、待機時間もふくめた顧客対応などの業務(A+B)を行った時間の割合であると言い換えられます。
稼働率の計算式は次の通りです。
・稼働率=(通話時間+保留時間+後処理時間+待機時間)÷業務時間×100
たとえば、一日の業務時間が8時間で、顧客対応などの業務に充てた時間が6時間の場合、稼働率は6時間÷8時間×100=75%です。稼働率のKPIを80%以上に設定している場合、コールセンターの生産性管理を見直す必要があります。ちなみに、顧客対応などの業務に充てた6時間のうち、待機時間が30分だとすると、この場合の占有率は5.5時間÷6時間×100=約91.7%となります。
・占有率=(通話時間+保留時間+後処理時間)÷(通話時間+保留時間+後処理時間+待機時間)×100
コールセンターの稼働率を適正に保つコツ
コールセンターの稼働率は高すぎず低すぎず、適正なバランスを保つ必要があります。そのためには、どのような取り組みを行えば良いでしょうか。ここでは、稼働率の適正化に向けた3つのコツを紹介します。
厳格なステータス管理を行う
コールセンターの稼働率を適正に保つには、オペレーター一人ひとりの稼働率を見える化し、現状を正確に把握することが大切です。その際に役立つのが、オペレーターのステータス管理です。「通話中」、「着信中」、「後処理中」、「待機中」、「離席中」など、オペレーターに随時ステータスを報告してもらい、正確な稼働率を算出しましょう。コールセンターシステムを導入すれば、管理画面から簡単に各オペレーターのステータスを設定できるため、現場にとっても大きな業務負担にはなりません。ステータス管理についてのルールを決め、正確にステータス設定を行うよう、オペレーターに周知を徹底することも大切です。
待機時間を有効活用する
顧客対応業務に直接関係しない研修、面談、ミーティングなど、その他の業務時間が多いと、稼働率は低下します。たとえば、トレーニングが必要な新人オペレーターが多い場合、研修に時間を取られ、稼働率が伸び悩むケースがあります。しかし、オペレーターのスキル維持や向上のためには、研修や面談、ミーティングの実施も欠かせません。コールセンターには呼量が多い時間帯と少ない時間帯があり、少なからずオペレーターの待機時間が発生します。そこで、一日の呼量予測に基づいて、呼量が少ない時間帯や待機時間に研修を実施するなど、時間を有効活用しましょう。こうした工夫も稼働率の適正化につながります。
オペレーターの環境を整える
稼働率のバランスを保つには、オペレーターの環境を整えることも大切です。たとえば、以下のような取り組みがあります。
- オペレーターの適切な人員配置
- オペレーターのケア
- オペレーター用FAQの活用
まず、オペレーターの適切な人員配置のためには、時間帯ごとの入電数に応じたシフト管理やタイムマネジメントを行ったり、必要な場合はオペレーターの人数を増やすのも一つです。しかし、稼働率と同時にオペレーターの離職率にも課題がある場合は、IVRなどを用いて一次受付や定型業務をシステム化することも検討しましょう。
オペレーターのケアは、離職率だけでなく稼働率においても大切です。稼働率が高すぎる場合は、オペレーターにとって負担の大きい労働環境である可能性があります。オペレーターのストレスを軽減できるよう、研修や面談、フォロー体制への取り組みも積極的に行いましょう。そして、オペレーターの環境を整えるために、顧客対応時に使えるFAQを活用するのもおすすめです。オペレーター用のFAQがあれば、応対品質の平準化やナレッジ共有による教育ツールとしても役立ちます。
【まとめ】
コールセンターの稼働率を見える化し、適正に保つための取り組みを
コールセンターにおける生産性管理の代表的なKPIが「稼働率」です。稼働率とは、一日の業務時間のうち、オペレーターが実際に顧客対応などを行った時間の割合を意味します。オペレーターの稼働率の目安は80%程度で、稼働率が高すぎても低すぎても問題です。オペレーターの稼働率を見える化し、適正に保つための取り組みを行うことが大切です。コールセンターの稼働率を適正化するには、「厳格なステータス管理を行う」、「待機時間を有効活用する」、「オペレーターの環境を整える」の3つの方法があります。また、IVRやFAQ管理システムなどのシステムをうまく取り入れることも、生産性向上には有効です。