新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年から、都市部を中心としてテレワークが普及しました。「通勤時間が削減される」、「自分や家族のための時間をとりやすくなった」など、テレワークが働き方改革を後押しする一方で、企業はさまざまな課題に直面しています。[注1]
とくに顕著なのが、テレワークにおける情報共有やコミュニケーション機会に関する課題です。テレワークの課題を解決するため、知見やノウハウを共有する「ナレッジマネジメント」を取り入れましょう。この記事では、テレワークにおけるナレッジマネジメントの重要性や課題を解説します。
[注1] 総務省:令和3年版情報通信白書
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd123420.html
目次
テレワークにおけるナレッジマネジメントの重要性
なぜテレワークにナレッジマネジメントが必要なのでしょうか。テレワーク(Telework)は文字通り、離れたところで(Tele)働く(work)ワークスタイルです。社員一人ひとりが離れた場所で働くため、オフィスワークとは違い、わからないことを近くの社員に聞くことができません。そのため、業務の属人化が進んだり、研修やスキルアップに支障をきたしたりするのがテレワークの課題です。こうした課題を解決するのがナレッジマネジメントの役割です。
テレワークは業務の属人化が進みやすい
業務の属人化とは、仕事の内容や進め方を特定の社員しか知らない状態を指します。業務の属人化が進むと、さまざまな弊害が生まれます。もし担当者が退職したり、病気で働けなくなったりした場合、業務の穴を埋めるのに時間がかかってしまいます。テレワークは社員が離れたところで働くため、業務の属人化が進みやすくなっています。もし質問や不明な点があっても、オフィスワークのように近くの社員に聞くことができません。そのため、テレワークを導入する場合は、仕事の進め方や業務知識、ノウハウなどのナレッジを共有し、業務の属人化を防ぐための仕組みが必要です。テレワークにおけるナレッジマネジメントの役割は2つあります。
- 働く場所が離れているため、意識的に知識を共有する
- わからないことをすぐに聞けないため、知識をデータ化しておく
ナレッジマネジメントツールを導入し、知見やノウハウを共有することで、テレワークにおける業務の属人化を防止できます。
研修やスキルアップが難しい
テレワークのもう一つの課題が「研修やスキルアップが難しい」という点です。テレワークは時間や場所にとらわれず働くことができる一方で、対面でのコミュニケーションが制限されます。そのため、社員教育を対面式の研修やOJTに頼ってきた企業は、人材育成計画の見直しが必要になりました。そこで注目を集めているのがナレッジマネジメントツールの導入です。FAQ管理システムや社内Wikiなど、オンラインでも使えるナレッジマネジメントツールを導入すれば、テレワークでも知見やノウハウを共有できます。たとえば、営業社員の場合、ベテラン社員の提案資料やトークスクリプトをナレッジマネジメントツールで共有することで、テレワーク環境でもスキルアップにつなげることが可能です。テレワークの課題を解決するため、ナレッジマネジメントツールの導入を検討しましょう。
テレワークにおけるナレッジマネジメントの課題
一方、テレワークにおけるナレッジマネジメントにもいくつかの課題があります。
- コミュニケーションの機会が少ない
- 情報共有のハードルが高い
テレワークは、オフィスワークと違って、社員同士で顔を合わせることがないため、コミュニケーション機会が限られます。また、相手の様子がわからず、メールやチャットのやり取りに時間がかかるため、情報共有のハードル自体が高くなります。
コミュニケーションの機会が少ない
テレワークとオフィスワークの違いとして、コミュニケーションの機会が少なくなる点にあります。
- 近くの社員に、気軽に質問できない
- ちょっとした会食や雑談の機会がない
- 会議やミーティングを実施しづらい
ナレッジマネジメントは「SECI(セキ)モデル」と呼ばれるフレームワークに沿って行われます。対面でのコミュニケーション機会が減少すると、最初の「共同化」のフェーズが阻害されます。
共同化(Socialization) | 共通の体験を通して、社員一人ひとりの暗黙知(勘や経験などの感覚的なノウハウ)を共有する |
表出化(Externalization) | 暗黙知を言語化・データ化し、形式知(客観的にとらえられる知識)として共有する |
連結化(Combination) | これまで形式知化した知識を組み合わせ、新しい知的資産を生み出す |
内面化(Internalization) | 学習やコーチングなどを通じ、生み出された知的資産を社員ひとりが体得する |
社員が離れたところで働くテレワークで、どのように「共通の体験」を生み出すのかがナレッジマネジメントの課題です。
情報共有のハードルが高い
また、テレワークではお互いの様子がわからないため、情報共有のハードルが高くなります。
- ITツールを使った非対面でのコミュニケーションに慣れていない
- テレワークに関する規程がなく、どうやって情報共有すればよいのかわからない
- 相手の状況が目に見えないため、コミュニケーションをとるタイミングがわからない
ナレッジマネジメントを成功させるには、社員一人ひとりの協力が欠かせません。相手の状況が目に見えないテレワークでも、進んでナレッジを共有できるような仕組みづくりが必要です。
テレワークにおけるナレッジマネジメントの課題を解決する方法
それでは、テレワークにおけるナレッジマネジメントの課題をどのように解決すればよいのでしょうか。ナレッジマネジメントの課題を克服する方法は2つあります。
- オンライン会議やオンライン研修を定期的に行う
- クラウド型のナレッジマネジメントツールを導入する
まずはコミュニケーション機会を確保するため、ビデオ会議やオンライン会議の機会を増やすことが大切です。ビデオ会議やオンライン会議なら、映像や音声を通じてお互いの様子がわかります。非対面でのやりとりに不慣れな人でも、気軽にコミュニケーションをとることが可能です。また、オンライン研修を定期的に行うことで、テレワークでも知見やノウハウを共有しやすくなります。実際にパーソル総合研究所の調べでは、75%の企業がオンライン集合研修の実施回数を増やしています。[注2]
ナレッジマネジメントツールを導入する場合は、クラウド型のサービスを選びましょう。クラウド型のサービスなら、インターネット環境があればオフィス以外の場所でも使えます。たとえば、クラウド型のナレッジマネジメントツールとして、グループウェアやコラボレーションツール、FAQ管理システムなどが挙げられます。
[注2] パーソル総合研究所:コロナ禍における研修のオンライン化に関する調査
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/online-training.pdf
【まとめ】
テレワークの生産性を高めるため、ナレッジマネジメントの導入を
テレワークやリモートワークが普及し、時間や場所にとらわれずに働く人が増加しました。テレワークはメリットばかりではなく、いくつかの課題もあります。たとえば、「業務の属人化が進みやすい」、「研修やスキルアップが難しい」といった課題です。テレワークの課題を解決できるのが、ナレッジマネジメントと呼ばれる経営手法です。ナレッジマネジメントを成功させるため、クラウド型のナレッジマネジメントツールの導入や、オンライン会議をはじめとしたコミュニケーション機会の確保に取り組みましょう。