商品購入やサービス利用を通じて、お客さまに満足していただくことを追求することは企業にとって大切です。利益追求型のマーケティング戦略だけでは、収益を生み続けることに限界があります。顧客志向を持ち、CS(顧客満足度)を高めることが、結果として企業の収益性を大きく高めることにつながります。
しかし、やみくもに顧客サービスを展開すると、それ自体が収益を圧迫し、一時的にCSの向上につながったとしても施策が長続きせず本末転倒になってしまいます。まずはCS向上の目的と指標を知り、自社のカスタマーサービスを見直すことが大切です。本記事では、CSの仕組みや指標、CS向上のメリットを解説します。
目次
CSとは?顧客がどれだけ満足しているかの指標
CS(Customer Satisfaction)とは、日本語で「顧客満足度」といい、自社の販売する商品や提供するサービスに対して、顧客がどれだけ満足しているかの度合いを表した指標です。
CS(顧客満足度)が重要視される理由
マーケティング戦略において、ターゲットとなるユーザーのCSを把握することは欠かせません。マーケティング用語の一つに「1:5の法則」という考え方がありますが、これは新規顧客を獲得するには、既存顧客の5倍のコストがかかるため、既存顧客との関係維持が重要であることを表現しています。CSを向上させることで、「顧客がより頻繁に来店、リピートしてくれるようになる」「顧客の1回あたりの購入金額(=顧客単価)」が上がる」など、結果として企業の売上アップにもつながります。CSは、既存顧客に向けたリテンションマーケティングやサブスクリプション方式のビジネスモデルにおいても重要な指標であると言えるでしょう。
逆にCSが下がると、口コミやSNSの書き込みを通じて企業のネガティブイメージが広がり、本来なら獲得できたはずの顧客を失いかねません。いかに顧客目線に立ち、CSを向上させ、自社に愛着や忠誠心を抱く「ロイヤルカスタマー」を育てるかが、企業のマーケティング戦略のポイントです。
CS向上に重要な顧客心理を理解する
CSを上げるには、まず顧客心理を理解することが大切です。
商品やサービスへの満足度は、事前に期待感を持つ「期待水準」と、実際の体験から得られる「知覚水準」の2つの顧客心理で決まります。知覚水準が期待水準を上回ると、「期待したよりも商品やサービスが良かった」という顧客心理が生まれ、CSが高くなります。
逆に知覚水準が期待水準を下回ると、「期待したよりも商品やサービスが良くなかった」という顧客心理が生まれ、CSが低下します。CSを高めるには、知覚水準が期待水準を上回る商品・サービス展開を行うことが大切です。
CS向上の2つのメリット
CSを向上させることで、次のようなメリットが生まれます。
リピート顧客が増加し顧客生涯価値(LTV)が上がる
CSを高め、お客さまに「またこの商品を買いたい」「またこの店舗に来店したい」と感じてもらうことで、リピート顧客の増加につながります。BtoBにおいても、自社製品やサービスを満足いただけるよう、サービスの導入支援を行ったり、カスタマーサポートを強化したりすることが大切です。
リピーターが増えると、顧客1人あたりの購入金額が増加し、顧客生涯価値(LTV)が上がります。結果として、CSを高めることが収益アップにつながります。
口コミでポジティブイメージが広まり新規顧客も増える
CSを高めることで、リピーターだけでなく、新規顧客獲得も期待できます。満足度の高いお客さまが、口コミやSNSの書き込みなどでポジティブイメージを広め、新たな顧客を生み出すためです。また、CS向上への取り組みを対外的にアピールすることで、企業のイメージが向上し、見込み顧客の創出にもつながります。
CSを把握するための4つの指標
CSを向上させるには、現時点での自社のCSを知り、CSがどれだけ上がったか、下がったかを把握する必要があります。CSを把握するための指標を活用し、カスタマーサービスの効果測定を行いましょう。ここでは、CSの把握に欠かせないNPS、CSI/JCSI、CAST、CESの4つの指標を紹介します。
1. 顧客ロイヤルティを数値化したNPS
NPS(Net Promoter Score)は、お客さまからの信頼や愛着を表す「顧客ロイヤルティ」を数値化できる指標です。「顧客推奨度」と翻訳されることもあります。
NPSを計測するには、商品やサービスを利用したお客さまにアンケートへの回答をお願いし、「この商品を家族や知人にどの程度おすすめしたいか」を0~10点までの数字で評価してもらいます。9~10点を「推奨者」、7~8点を「中立者」、0~6点を「批判者」とし、推奨者の割合から批判者の割合を引くことで、NPSをスコア化できます。たとえば、推奨者が40%、批判者が20%であれば、NPS(=顧客ロイヤルティ)のスコアは+20となります。
2. 事前期待との比較に役立つCSIとJCSI
CSI(Customer Satisfaction Index)は、日本語で「顧客満足度指数」といい、1994年にミシガン大学が開発し、アメリカを中心として国際的に利用されている指標です。このCSIを日本語版にカスタマイズした日本独自の顧客満足度指標を、JCSI(Japanese Customer Satisfaction Index)といいます。JCSIは、下記6つの指標を用いてアンケート調査を行います。
- 顧客期待値(Customer Expectations)
- 知覚品質(Perceived Quality)
- 知覚価値(Perceived Value)
- 顧客満足度(Customer Satisfaction)
- 顧客不満度(Customer Complaints)
- 顧客忠実度(Customer Loyalty)
とくに「顧客期待値」をベースとして、「知覚品質」「知覚価値」の落差や、結果的な「顧客満足度」「顧客不満度」「顧客忠実度」の度合いなど、事前期待との比較に役立つ指標です。
3. 顧客の満足度を指標化したCSAT
顧客が商品やサービスにどのくらい満足したかを測る指標が、CSATです。CSATは、「全く満足していない」から「大変満足している」までの5段階で評価をしてもらうのが一般的で、「満足」とした回答数を、全回答数で割り、100をかけてスコア化します。あわせて、具体的なフィードバックを顧客にヒアリングする場合もありますが、その際は顧客がどこに満足をしているかを確認するとよいでしょう。
4.どのくらい使いやすかったか?を測るCES
CES(Customer Effort Score)は「顧客努力指標」を意味し、顧客が自身の課題を解決するためにどれだけ労力を要したのかを測る、いわば顧客が抱いたネガティブな要素を数値化する指標です。顧客への質問は、「サービス手続きにどのくらい時間がかかりましたか」といったように、顧客にかかった負荷を探る内容にします。CESの結果、数値が高いほど不満が多くなり、数値が少ないほど満足度が高いといえます。
FAQコンテンツを充実させればCSも上がる!
CS向上に役立つのが、お客さまが知りたい「よくある質問」をまとめたFAQコンテンツです。
カスタマーサービスでは、近年「セルフサービス」が注目を集めています。スマートフォンやタブレットを使い、知りたい情報を知りたいときに知れるセルフサービスモデルを用意することで、お客さまが企業やカスタマーサービスに好感を持ち、CS向上につながります。セルフサービスモデルの1つがFAQコンテンツです。FAQコンテンツを充実させれば、お客さまが商品やサービスに疑問や悩みを抱えたとき、好きなときにいつでも自己解決できます。カスタマーセンターへの問い合わせと違い、FAQコンテンツなら電話の手間も待ち時間も発生しません。
FAQコンテンツの充実は、CS向上に有効な手段のひとつといえるでしょう。回答の最後に方に「この回答は役に立ちましたか?」というような簡単なCSアンケートを設置しておくこともできます。FAQコンテンツの作成が初めての方は、FAQ管理システムを導入するとスムーズです。
【まとめ】
CSの仕組みや指標を知りカスタマーサービスの改善を
CSを高めることが、結果として企業の収益アップにつながります。CSの向上によって、「リピート顧客の増加」「新規顧客獲得」「企業イメージの向上」といったメリットが得られます。
CSを向上させるには、CSの重要性や指標を知り、カスタマーサービスの改善や効果測定を行うことが大切です。近年、カスタマーサービスではセルフサービスモデルが注目を集めています。FAQコンテンツを充実させ、お客さまが疑問や悩みを自己解決できる場所を用意することで、CSを高めることが可能です。