コールセンターは顧客に対する電話対応業務を専門とする部門であり、顧客窓口としての役割を持つことから多くの企業で設置されています。しかし、コールセンターを運営しているものの十分な成果が得られていないとお悩みの方も多いでしょう。コールセンターを効果的に運営するためには、明確な目標設定や業務プロセスの整備、優秀な人材の育成などいくつかのポイントがあります。また、近年のコールセンター業務では自動化ツールやITツールの活用も不可欠です。本記事ではコールセンターの運営を成功させるポイントについて、分かりやすく解説します。
目次
コールセンターの運営を成功させる5つのポイント
コールセンターの運営を成功させるためのポイントは「目的の明確化」、「KGI・KPIの設定」、「組織マネジメントの設計」、「業務プロセスの整備」、「優秀なスーパーバイザー(SV)の育成」の5つです。それぞれのポイントについて解説します。
1. コールセンターの目的を明確にする
コールセンターを効果的に運用するためには、予めコールセンターを運営する目的を明確にすることが大切です。明確なゴールがなければコールセンターの運営方針を見失い、業務効率を著しく低下させてしまいます。まずは自社が抱える課題を洗い出し、課題解決に向けてコールセンターをどのように運営すべきか考えましょう。たとえば、「問い合わせ対応の効率を上げる」ことを目的とする場合は、問い合わせのカテゴリごとに担当者やチームを配置する方法が考えられます。また、「新規顧客の獲得」を目的とする場合は、テレアポや営業電話など能動的に顧客へアプローチするアウトバウンド業務の比率を高めるとよいでしょう。
2. KGI・KPIを設定する
目的の達成を目指してコールセンターを運営するためには、コールセンター部門におけるKGIとKPIの設定が必要となります。KGI(Key Goal Indicator、経営目標達成指標)とは、業務における目標達成の度合いを定量的に評価するための指標です。コールセンターにおけるKGIとしては「新規顧客〇件の獲得」、「顧客満足度100点中〇点以上を達成する」などが考えられます。KPI(Key Performance Indicators、重要業績評価指標)は、目標達成のプロセスを定量的に評価するための指標です。たとえば、KGIとして新規顧客の獲得を設定している場合、その達成のためには「架電数(電話をかけた件数)〇件以上」のようにKPIを設定します。KGIはコールセンターの運営目的を具体的な数値にした「最終目標」であり、KPIはKGI達成のための「中間目標」という位置付けです。KPIは定期的にモニタリングを行い、KGIの達成進捗に問題がないかチェックしましょう。
3. 組織マネジメントを設計する
コールセンターの運営では、組織マネジメントも重要です。組織マネジメントには組織編成の構築のほか、人材管理や品質管理も含まれます。KGI・KPIの達成を第一として、人員配置や仕組みを整備しながら組織図をまとめていきましょう。一般的に、コールセンターで必要とされる役職・人員としては「センター長」、「スーパーバイザー(SV)」、「リーダー」、「オペレーター」が挙げられます。組織図を構築する際は各役職に何名配置するのかだけでなく、採用やシフト作成、KPIの管理などの業務を誰に担当させるのかも合わせて考えていきましょう。
4. 業務プロセスを整備する
コールセンターの品質向上のためには業務プロセスの整備が不可欠です。まずはコールセンターの通常業務をリスト化し、各業務の重要性も考慮しながら業務フローを再構築していきましょう。業務フローの中にKPIを定期的に報告させる仕組みを組み込むことも大切です。また、業務プロセスを整備する一環として以下の内容にも着手しましょう。
- 業務マニュアルの作成
- トークスクリプト・FAQの作成
- クレームなど不測の事態に対するフォロー体制の構築
コールセンター部門は派遣社員など非正規雇用の従業員が占める割合が高く、人員の入れ替わりも頻繁に発生します。また、オペレーター業務未経験者が採用されるケースも珍しくありません。慢性的な人手不足に悩まされるコールセンターでは、新規採用者を早期に戦力化できる仕組みを構築することが安定した運営と品質の向上につながります。
5. 優秀なスーパーバイザー(SV)を育成する
コールセンターの品質を左右する重要な役職が「スーパーバイザー(SV)」です。SVは一般的に特定のチームの管理・監督を行う人員を指し、コールセンターにおいてはオペレーターの指導や管理を担当します。また、オペレーターが対処できない案件やクレームの対応をすることもSVの重要な仕事です。SVにはその業務の性質から高い人間性が求められます。一般的にSVに向いているとされる人の特徴は以下の通りです。
- 誰に対しても平等に接することができる
- 目の前の問題に対して柔軟な思考ができる
- 感情に左右されずに冷静な対応ができる
- 数字の管理が苦にならない
新たなSVを任命する際は、経験を積んだオペレーターの中から選出する方法が最もスムーズです。ただし、SVは業務量や精神的負担も増すため、職務に相応する処遇を用意しましょう。また、SVの教育環境やフォロー体制を整備し、オペレーターがキャリアアップの選択肢としてSVへの昇進を希望するような職場環境を整えることも大切です。
コールセンターの運営を効率化する方法
人手不足に悩まされやすいコールセンターでは、業務の効率化が大きな課題です。ここではコールセンターの業務効率を改善する方法を紹介します。
研修・ミーティングで知識を共有する
オペレーター個々の顧客対応スキルを向上させるため、研修やミーティングを通じてオペレーター間で知識を共有する機会を設けましょう。コールセンターは多くの顧客と接する機会がある部署であり、イレギュラーな対応が求められるケースも少なくありません。過去の事例を記録し、共有することで、類似の事例が発生した場合の対処もスムーズになります。
自動化ツールを導入する
各種の自動化ツールは業務の効率化を図るうえで欠かせない要素です。コールセンターにおいても自動音声による初期案内のシステム(IVR)が広く普及しています。その他にも音声認識による通話内容のテキスト変換や、チャットボットによる問い合わせの自動回答など、コールセンターで活用できる自動化ツールは多岐に渡ります。コールセンター業務の効率化とは顧客接点を増やすこと、つまりオペレーターがより多くの顧客と通話できるようにすることです。自動化ツールの活用により業務フローの簡略化や業務負担の軽減を図れば、より多くの人的リソースをオペレーター業務に割くことができます。
コールセンターの運営に役立つシステム
コールセンターの運営を成功させるためには自動化ツールやITツールの活用が欠かせません。ここでは多くのコールセンターで採用されている代表的なシステムを紹介します。
FAQ管理システム
FAQ管理システムとは、「よくある質問」とその回答を作成し、作成したFAQを管理・検索できるようにするシステムです。企業ホームページ等にFAQコンテンツを配置することで、ユーザーに対して疑問の自己解決を促します。コールセンターにおけるFAQ管理システムのメリットは「簡単な内容の問い合わせが減少すること」です。オペレーターのリソースを複雑な問い合わせに集中させることができるため、顧客対応の品質向上も期待できます。
チャットボット
チャットボットは、顧客からの問い合わせに対してAIが適切な返答を行うチャット形式の問い合わせツールです。FAQ管理システムと同様にユーザーの疑問を自己解決に導き、コールセンターの業務負担を軽減するツールとして広く活用されています。なお、チャットボットは企業ホームページに設置されるほか、LINE等のSNS上で運用されるケースもあります。
CRMシステム
CRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理)システムとは、顧客情報や購買履歴等を一元管理するためのツールです。顧客情報を集約し、その属性や購入アイテムを分析することで、顧客一人ひとりに最適なサービスを提供することを目的とします。コールセンターでは顧客情報を正確に把握するためにもCRMの活用が必須です。顧客情報を把握することで適切な顧客対応ができるようになるほか、アウトバウンド施策を実施する際もCRMに蓄積されたデータから対象顧客を絞り込むことができます。
【まとめ】
コールセンターは明確な目的を定めて運営しよう
コールセンターの運営では、まずその目的を明確にすることが重要です。目的に沿ってKGIやKPI等の業務目標を設定し、目標達成のために必要な人材の配置や教育を実施しましょう。明確なゴールを目指して組織編成や仕組みづくりを進めることが、コールセンターの運営を成功させるポイントです。また、慢性的な人手不足に悩まされるコールセンターでは自動化ツールやITツールの活用も欠かせません。FAQ管理システムやチャットボットを導入し、効率的なコールセンター運営を心掛けましょう。