コールセンターでは、目標達成までの道のりを可視化するため、「応答率」や「稼働率」などのKPIを設定しています。そもそもKPIとはなにか、コールセンターで使われるKPIにはどのようなものがあるのか、この記事では、コールセンターで使われるKPIを「応対品質」、「顧客満足度」、「業務効率」、「マネジメント」の4つに分類し、網羅的に解説します。
目次
そもそもKPIとは?具体的な数値目標のこと
KPI(Key Performance Indicator)とは、日本語で「重要業績評価指標」と呼ばれ、企業が目標達成のために設定する具体的な数値目標を意味します。たとえばコールセンターでは、「顧客満足度を向上させる」、「応対品質を改善する」といった目標がよく設定されます。しかし、そのままでは抽象的でどうすれば目標を達成したことになるのか、目標達成に向けて具体的になにをすべきなのかがわかりません。そこで、「顧客推奨度(NPS:Net Promoter Score)を○○%改善する」、「サービスレベル(SL)を○○%向上させる」といったKPIを設定することで、達成すべき目標が数値化され、スタッフ全員にとって客観的に理解でき、共有しやすくなります。そのため、コールセンターでは目標達成に向けて、具体的なKPIを設定するのが一般的です。
コールセンターの「応対品質」に関する4つのKPI項目
まず、コールセンターの応対品質に関わるKPI項目を見てみましょう。コールセンターでは、主に「応答率」、「放棄呼率(放棄率)」、「サービスレベル(SL)」、「平均応答速度(ASA)」の4つが応対品質のKPIとして使われます。
【応答率】オペレーターが応答した割合のこと
応答率とは、コールセンターにかかってきた電話のうち、オペレーターが対応できたコールの割合で、一言でいうと、コールセンターへのつながりやすさを表す指標です。応答率は、以下の計算式で求めることができます。たとえば、対応数が800件、着呼数が1,000件の場合、応答率は80%です。
応答率=対応数÷着呼数×100
【放棄呼率(放棄率)】オペレーターが応答できなかった割合のこと
放棄呼率(放棄率)は話中率と呼ばれることもあり、応答率とは逆に、オペレーターが応答する前に切れてしまったコールの割合です。着呼数1,000件のうち、放棄呼数が80件の場合、放棄呼率は8%です。
放棄呼率=放棄呼数÷着呼数×100
【サービスレベル(SL)】設定した時間内で応答できた割合のこと
コールセンターでは、オペレーターが対応するまでの時間の目安を設定するのが一般的です。コールセンターへの入電のうち、この設定時間内に対応できたコールの割合をサービスレベル(SL:Service Level)と呼びます。応答率と同じく、コールセンターへのつながりやすさを表します。
サービスレベル(SL)=設定時間内の対応数÷着呼数×100
【平均応答速度(ASA)】応答までにかかる平均時間のこと
平均応答速度(ASA:Average Speed of Answer)は、コールセンターへの入電からオペレーターが対応するまでにかかった時間の平均です。平均応答速度は、以下の計算式で求められます。たとえば、応答までの時間の合計が30,000秒で、着呼数が1,500件の場合、平均応答速度は20秒です。
平均応答速度(ASA)=応答までの時間の合計÷着呼数
コールセンターの「顧客満足度」に関する2つのKPI項目
コールセンターの顧客満足度を調べる場合、「顧客満足度(CS)」、「顧客推奨度(NPS)」の2つのKPI項目を使うのが一般的です。
【顧客満足度(CS)】サービスへの満足度を可視化したもの
コールセンターやコンタクトセンターでは、顧客にアンケート調査を実施し、サービスへの満足度を測ります。また、コールセンターにおいては、顧客が問題解決をできたかどうかや、問い合わせ対応を通じて満足できたかどうかを調べます。こうしたアンケート調査を分析し、スコア化した指標を顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)と呼びます。
【顧客推奨度(NPS)】顧客ロイヤルティをスコア化したもの
自社の商品やサービスへの愛着(ロイヤルティ)を可視化したい場合は、顧客推奨度(NPS:Net Promoter Score)という指標を使います。「どのくらい満足したかどうか」を調査する顧客満足度とは異なり、「商品やサービスをどのくらい他の人に勧めたいと思いますか」といったアンケートで10段階評価してもらいます。アンケートで得られた回答を「批判者」、「中立者」、「推奨者」に分類し、顧客ロイヤルティをスコア化します。
顧客推奨度(NPS)=推奨者の割合(%)−批判者の割合(%)
コールセンターの「業務効率」に関する5つのKPI項目
コールセンターが効率的に運営されているかを調べるため、業務効率に関するKPIを設定することもあります。業務効率のKPIは次の5つです。
【稼働率】どれだけ効率的に働いたかの指標
稼働率とは、オペレーターが働く時間のうち、どれだけの時間を顧客対応に費やしていたかを表す指標です。稼働率が高いほど、オペレーターが効率的に働いていることがわかります。
稼働率=対応時間の合計÷労働時間(離席時間をのぞく)
【平均通話時間(ATT)】顧客との通話にかかった時間のこと
平均通話時間(ATT:Average Talk Time)は、顧客対応1件につき、顧客との通話にかかった時間の平均です。
平均通話時間(ATT)=通話時間の合計÷対応数
【平均後処理時間(ACW)】通話後の後処理にかかった時間のこと
平均通話時間と違い、通話後の後処理にかかった時間の平均を平均後処理時間(ACW:After Call Work)と呼びます。
平均後処理時間(ACW)=後処理時間の合計÷対応数
【平均処理時間(AHT)】顧客対応にかかった時間の合計
通話や後処理もふくめ、顧客対応そのものにかかった時間の平均が、平均処理時間(AHT:Average Handling Time)と呼ばれる指標です。平均処理時間は、平均通話時間と平均後処理時間を合計することで簡単に計算できます。
【コスト・パー・コール(CPC)】1件あたりの顧客対応コストのこと
顧客対応にかかる時間ではなく、1件あたりどれだけの人件費や設備費などのコストがかかっているかを可視化する指標が、コスト・パー・コール(CPC:Cost Per Call)です。
コスト・パー・コール(CPC)=コールセンターの運営にかかるコストの合計÷対応数
コールセンターの「マネジメント」に関する2つのKPI項目
顧客満足度の高いコールセンターであるためには、マネジメントによって、現場のオペレーターのパフォーマンスをいかに引き出すかが大切です。コールセンターのマネジメントがうまくいっているかどうかのKPIは2つあります。
【欠勤率】オペレーターが欠勤した割合のこと
欠勤率とは、その月の勤務日数のうち、オペレーターが欠勤した割合を表す指標です。たとえば、予定勤務日数が20日で、該当のオペレーターが1日欠勤した場合、その月の欠勤率は5%です。欠勤率が高い場合、オペレーターのマネジメントがうまくいっておらず、労働環境や職場環境、人間関係のトラブルなどが発生している可能性があります。
【離職率】オペレーターが離職した割合のこと
離職率も、欠勤率と同様に労働環境や職場環境の良し悪しを測るための指標です。オペレーターの人数に対し、離職したオペレーターの人数の割合を表すことを離職率と呼びます。離職率が高い場合は、労働環境や職場環境の悪化のほか、新人のオペレーターに対するオンボーディングなどがうまくいっていない可能性があります。
【まとめ】
コールセンターの13のKPIを知り、目標達成までの道のりを具体化しよう
コールセンターで使われるKPIは、大きく分けて13個あります。こうしたKPIを設定することで、目標達成に向けて具体的になにが必要なのか、どの程度の改善が必要なのかが可視化されます。コールセンターの応対品質、顧客満足度、業務効率、マネジメントの課題を抱えている場合は、この記事で紹介したKPIをぜひ参考にしてください。また、各KPIを達成するには、ITツールの活用が欠かせません。設定したKPIに必要なものや自社に合うものを検討し、ツールをうまく活用しながら、KPIや目標達成に向けて取り組みましょう。