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コールセンターはAI(人工知能)で効率化する?
注目される背景や課題点

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コールセンターはAI活用で効率化する?注目される背景や課題点
「AIコールセンター」や「AIオペレーター」と呼ばれるようなチャットボットや音声認識システムによる業務支援など、AI(人工知能)を積極的に活用するコールセンターが増えています。コールセンター業界でAIへの注目度が高まっているのはなぜでしょうか。また、AIを導入すれば、具体的にどのようなことができるのでしょうか。AIには多くのメリットがありますが、いくつか課題があるのも事実です。この記事では、コールセンターでAIが注目される背景や活用シーン、AI導入に向けて克服しておきたい課題点を解説します。

コールセンターでAIが注目される背景

コールセンターでよくある課題として「人材不足」や「応対品質のばらつき」があります。そこで、業務効率化による人材不足の解消や応対品質の向上を目的として、AIを導入するコールセンターが増えています。総務省の平成30年版情報通信白書でも、コールセンターのAI導入事例として、「AIによる回答候補の提示」や「チャットボットなどによる自動応答」が挙げられています。[注1]

また、AIの導入や活用が加速する背景として、コールセンターに求められる役割の変化も指摘されています。これまでのコールセンターは、主に顧客の問い合わせやクレームへの対応といった、いわゆる商品購入やサービス契約後のアフターサービスをメインとする存在でした。しかし、現在は顧客とダイレクトに接点を持つ企業のフロント部門の一部として、重要な役割を果たしています。そのため、近年のコールセンターでは、商品やサービスの認知から、検討、購入や契約までのカスタマージャーニーの一部を構成し、良質な顧客体験(CX:カスタマー・エクスペリエンス)を生み出す「顧客接点」としての役割が求められています。そこで役に立つのが、機械学習やディープラーニングをはじめとしたAIの活用です。

たとえば、AI搭載のIVR(Interactive Voice Response )システムを活用すれば、顧客からの入電を適切な部署へ振り分けることが可能なため、対応時間の削減や顧客満足度の向上を図ることができます。また、AIによるデータマイニングやテキストマイニングは、顧客の自己解決をアシストするチャットボットや、VOC(顧客の声)分析での応対品質改善に役立てることができます。このように、AIを導入することでアフターサービスのための「オペレーター」ではなく、顧客から寄せられる多様なリクエストに応える「コンシェルジュ」として一歩進んだカスタマーサポートを提供することが可能になります。

[注1] 総務省:平成30年度情報通信白書
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd145110.html

コールセンターへのAI導入でできることや活用シーン

コールセンターはAI活用で効率化する?注目される背景や課題点
AIを導入することで、オペレーター業務の自動化・半自動化や、顧客の自己解決促進による問い合わせ削減を実現することができます。コールセンターでみられるAIの活用シーンは、「IVRとAIの組み合わせ」、「AIチャットボット」、「AIによる業務支援」の3つです。

IVRとAIを組み合わせ、問い合わせを最適な応対部署へ振り分ける

IVRは、顧客からの電話問い合わせに対してあらかじめ用意した音声案内で、発話やプッシュボタン入力に応じて顧客対応を行う自動音声応答システムです。IVRはAIを用いた音声認識技術と組み合わせることが可能です。従来のIVRは、顧客自身に電話機やスマートフォンのプッシュボタンを押してもらうことで、適切な問い合わせ対応を行っていました。音声認識技術を活用すれば、顧客の音声をAIが分析し、最適な応対部署へ自動で振り分けられます。また、定型的な問い合わせであれば、チャットボットのようにAIが回答することも可能です。IVRとAIを組み合わせることで、自動振り分けによる対応時間の削減顧客満足度の向上、音声認識によるプッシュボタン操作の削減でユーザビリティの向上を図ることが可能です。

音声コミュニケーションを活用した業務効率化 事例集▶︎  【お役立ち資料】音声コミュニケーションを活用した業務効率化 事例集

AIチャットボットを活用し、より精度の高い回答を提供する

AIを組み込んだチャットボットもコールセンターで活躍しています。チャットボットとは、あらかじめ分析した問い合わせデータに基づき、AIが会話形式で顧客の問い合わせへ自動応対するサービスのことです。従来のチャットボットは、表記ゆれや曖昧な表現に対応できなかったり、事前に用意したシナリオに沿った回答しかできないといった欠点がありました。AIチャットボットなら、機械学習によって類義語や言い換え表現にも対応でき、シナリオを用意していない問い合わせに対しても、回答のレコメンドが可能です。定型的な問い合わせや問い合わせの多い内容は、AIチャットボットに任せることで顧客の自己解決促進や、オペレーター業務の自動化・半自動化を実現できます。

もう失敗しない!チャットボット導入のポイント▶︎  【お役立ち資料】もう失敗しない!チャットボット導入のポイント

AIによる業務支援で、オペレーターの業務負担を軽減する

オペレーターの業務負担を軽減するには、AIによる業務支援も効果的です。代表的な業務支援機能として、「レコメンド機能」と「自動要約機能」の2つがあります。レコメンド機能とは、AIが顧客との会話をリアルタイムに分析し、関連性の高いナレッジをオペレーター画面に表示する機能です。自動要約機能は、応対記録をAIが自動で要約することで、顧客対応後の業務負担が削減できます。

コールセンターへのAI導入でよくある3つの課題点

AIのメリットはこれまで述べてきた通りですが、一方でコールセンターへのAI導入にはいくつか課題点もあります。ここでは、AI人材不足や責任問題、導入プロセスで生じやすい課題について解説します。

43.7%の企業が「AI人材」がいないと回答

AIの導入や活用に欠かせないのが「AI人材」です。AI人材とは、AIに関する深い知識を持った人材を指し、AIの企画・導入から、現場でAIが活用できるよう運用管理などを担います。しかし、多くの企業ではAI人材が不足しています。総務省の令和2年版情報通信白書によると、「IoT・AI等のシステム・サービスを導入しない理由」として、2番目に多い回答が「使いこなす人材がいないから(43.7%)」という結果でした。[注2]

全体の40%以上の企業がAI人材の不足を実感するなかで、いかにAIのキーパーソンを確保するかが課題です。

[注2] 総務省:令和2年度情報通信白書
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd252150.html

AIが誤った判断をした場合の責任問題

AIは音声・画像・テキストなどの膨大なデータを分析し、顧客対応や業務を行いますが、常に正しい判断ができるわけではありません。とくに学習データが不十分な場合、誤った判断をする可能性が高まります。AIが誤った判断をした場合、誰がどのように責任を持つのかが明確に決まっていないと、現場に混乱が生じます。コールセンターに限ったことではありませんが、AIを導入する際は、運用ルールを整備し、万が一に備えてAIによる問題発生時の責任の所在や対応フローを決めておきましょう。

AIよりもオペレーターが対応すべき業務もある

そもそも、人でも対応が難しい複雑な業務や柔軟性が求められる業務、重大な責任がともなう業務にAIはあまり向いていません。AIにも向き不向きがあるため、得意な領域を理解することが大切です。AIを導入する前に、コールセンター業務の棚卸しをおこない、有人対応を継続すべき部分とAIで自動化すべき部分、あるいはハイブリッドで半自動化にしたほうがよい部分を振り分けましょう。たとえば、ある程度内容が決まっている定型的な問い合わせ対応やデータ分析は、AIが得意とする分野の1つです。また、前述した「レコメンド機能」のように、オペレーターの対応をサポートできるのもAIの強みです。AIにできることとできないことを理解し、賢く活用しましょう。

【まとめ】

AIを賢く活用することで、コールセンターの業務効率化が実現する

AIと組み合わせて使うIVRやAIチャットボットなど、業務効率化や応対品質向上の手法として、AIを検討するコールセンターが増えています。AI導入には、AIチャットボットによる問い合わせ削減や、AIによる業務支援など、さまざまなメリットがあります。一方、AIを使いこなす人材の不足や、AIが誤った判断をした場合の責任の所在、有人対応とAI対応の見極めなど、効率化を実現するためにはいくつか課題もあります。オペレーターが対応すべき業務とAIが対応すべき業務を分け、賢くAIを活用することが大切です。

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