オペレーターの業務負担を軽減するため、コールセンター業界ではAIの導入が積極的に進められています。そのなかでも、近年注目を集めているのが、AIによる音声認識と音声合成を用いて問い合わせ対応や予約受付を代行する「AI自動音声(電話)応答システム」です。チャットボットや従来のIVR(Interactive Voice Response)と比べて、AI自動音声応答システムにはどのような導入メリットがあるのでしょうか。また、具体的にどのようなシーンで活用できるのでしょうか。この記事では、AI自動音声応答システムの強みや活用方法、ツール選定のポイントを紹介します。
目次
AI自動音声(電話)応答システムとは?
AI自動音声(電話)応答システムとは、AI(人工知能)の技術を活用した音声認識や音声合成、自然言語処理により、問い合わせ対応などの電話業務を自動応答するシステムです。一般的なAI自動音声応答システムでは、次のような流れで電話による顧客対応を自動化しています。
- 顧客の音声をリアルタイムに認識し、テキストデータとして書き出す
- 自然言語処理でテキストデータを分析し、問い合わせ内容を理解する
- 事前に用意したシナリオに基づき、最適な回答をテキストデータで生成する
- 音声合成エンジンにより、テキストデータの内容を音声化する
サービスにもよりますが、AIを活用した音声認識技術の精度は70~95%程度だといわれています。チャットボットなどと同様に、得意不得意はありますが、AI自動音声応答システムは、一問一答形式で対応するシンプルなものや定型的な問い合わせに対して、活躍が期待できます。オペレーターの人材不足や定着率、働き方改革にともなうワークライフバランスの確保が課題とされるコールセンター業界のなかで、問い合わせ業務の自動化の一環として、AI自動音声応答システムの普及が進んでいます。コールセンターにおけるあふれ呼や棄損呼の削減、24時間代行、適正なオペレーターの配置などへの対策として、AI自動音声応答システムは有効です。
AI自動音声応答システムの2つの導入メリット
AI自動音声応答システムを導入することで、どのようなメリットを得られるのでしょうか。ここでは、チャットボットや従来のIVRにはない、AI自動音声応答システムならではの導入メリットを2つ紹介します。
顧客の離脱率が低い
これまで、電話による顧客への自動音声案内には、IVR(Interactive Voice Response)を利用するのが一般的でした。従来のIVRでは、問い合わせ対応のやりとりとして、顧客が都度プッシュボタンを押す必要がありました。間違ったボタンを押してしまったり、階層が深くなったりすると、顧客が途中で離脱するリスクが存在します。AI自動音声応答システムなら、AIの技術を活用した音声認識や音声合成、自然言語処理によって、AIがシナリオに基づいてその場で音声案内を行い、文字情報を扱うことができます。IVRのように操作の手間がかからないので、顧客体験を損なわず、スムーズに問い合わせ対応できるのがAI自動音声応答システムのメリットです。
オペレーターの業務負担を軽減できる
AI自動音声応答システムを導入し、問い合わせ業務の一部を自動化すれば、オペレーターの業務負担を軽減できます。チャットボットと違い、AI自動音声応答システムの強みは電話でやりとりを行う点です。中高年層やシニア層の中には、スマートフォンを所有していなかったり、チャットでのやりとりに抵抗感がある方が少なくありません。AI自動音声応答システムなら、電話でのやりとりがメインの顧客にも対応可能です。
AI自動音声応答システムの2つの活用シーン
AI自動音声応答システムを活用する事例が増えていますが、具体的にはどのようなシーンで活用されているのでしょうか。実際にAI自動音声応答システムが活躍している「面談予約の受付の自動化」と「代表電話の時間外受付」の事例を紹介します。
面談予約や修理受付の自動化
企業の採用活動や顧客との面談予約、あるいは工事や修理などの受付業務にAI自動音声応答システムが使われています。AI自動音声応答システムで受付を行う場合、①発信番号の確認、②氏名の確認、③スケジュールの確認の3点を主なシナリオとして想定します。面談予約や修理受付は定型業務が多く、事前に用意したシナリオを大きく外れることがないため、AI自動音声応答システムが得意とする業務の1つです。ほかにも、注文受付や資料請求の受付といった業務にAI自動音声応答システムを活用するケースも増えています。また、AI自動音声応答システムをカレンダーアプリと連携すれば、スケジュールの案内やリマインドといったアフターフォローも可能です。
夜間や休日の電話代行
夜間や休日の電話対応にもAI自動音声応答システムが活躍しています。営業時間外の入電や、オペレーターを配置しづらい夜間や休日、電話が集中してオペレーターが対応できないケースで、AI自動音声応答システムが強みを発揮します。AI自動音声応答システムを導入すれば、日中に電話ができない顧客へのフォローが可能になったり、夜間対応の実現によって朝一や週初めに集中しやすかった入電を緩和することができます。自動化により、業務効率化だけでなく、顧客満足度の向上を図ることも可能です。
AI自動音声応答システムを選ぶ2つのポイント
さまざまなシステムベンダーが、AI自動音声応答システムを提供しています。ツール選定にあたって、オペレーターへの転送や、他のシステムとのAPI連携が可能かどうか確認しましょう。
オペレーターへの転送が可能か
前項で述べた通り、AI自動音声応答システムは「ルールベース型」の製品が多く、事前に想定したシナリオに基づいて自動応答を行います。そのため、定型業務には強みを発揮しますが、シナリオを大きく外れるような問い合わせには不向きです。シナリオから大きく外れたり、AI自動音声応答システムが対応できない問い合わせの際など、必要に応じてオペレーターへ転送を行う必要があります。AI自動音声応答システムを選ぶときは、AI自動音声応答システムにできることとできないことを整理し、オペレーターとの連携が可能かを確認しましょう。
他のシステムとのAPI連携は可能か
他のシステムとのAPI連携が可能かどうかもチェックしましょう。面談予約や修理受付の事例で解説したように、カレンダーアプリと連携可能なAI自動音声応答システムなら、スケジュールの案内やリマインドといったアフターフォローもできます。また、AI自動音声応答システムによっては、従来のIVRとの併用が可能な製品もあります。たとえば、商品購入の案内など、音声よりもプッシュボタンでの操作の方が適した場合もあります。導入する際は、自社に合った最適なツールを選ぶことが大切です。
【まとめ】
AI自動音声(電話)応答システムなら、オペレーターの業務負担を軽減できる
AI自動音声(電話)応答システムなら、顧客体験を損なわず、人を介さないで電話による顧客対応が可能です。オペレーターの業務負担を軽減し、業務効率化を実現したいコールセンターにもAI自動音声応答システムがおすすめです。AI自動音声応答システムは、「面談予約や修理受付の自動化」、「夜間や休日の電話代行」など、さまざまなシーンで利用されています。AIにできることとできないことを整理したうえで、AI自動音声応答システムを有効活用しましょう。