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暗黙知と形式知の違いや
ナレッジマネジメントを実施するためのポイント

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生産性や業務効率を改善するために、ナレッジマネジメントを導入する企業が増えています。総務省の令和3年版情報通信白書によると、日本の労働生産性(就業者1人当たり)はG7各国のなかでもっとも低く、米国の約6割の水準にとどまります。[注1]
ナレッジマネジメントを取り入れれば、業務に役立つ知識やノウハウを水平展開し、生産性の向上が期待できます。ナレッジマネジメントを実践するうえで重要なのが、「暗黙知」と「形式知」の違いを理解することです。この記事では、暗黙知と形式知の違いや、暗黙知を形式知化するためのナレッジマネジメントのポイントについて詳しく解説します。

[注1] 総務省:令和3年度情報通信白書
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112110.html

暗黙知と形式知の違いは?具体例を挙げてわかりやすく解説


そもそも、「暗黙知」と「形式知」はそれぞれどのような種類の知識を指す言葉なのでしょうか。暗黙知とは、ハンガリーの社会学者マイケル・ポランニーが考案した言葉で、総務省は「ノウハウや経験など形式化して整理することが困難な知識」と定義しています。一方、形式知は「文字や図表を通じて形式化できる知識」を指します。[注2]
暗黙知と形式知の違いを表にまとめました。

暗黙知 形式知
定義 ノウハウや経験など形式化して整理することが困難な知識 文字や図表を通じて形式化できる知識
習得方法 身体で覚えたり、経験を積んだりすることで習得できる 文字や図表を参照することで習得できる
伝えやすさ 言語化されておらず、知識の継承に時間がかかる 言語化されており、知識の継承が容易

[注2] 総務省:企業内における知識経営の高度化
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ict/u-japan/new_r_i02m.html

暗黙知と形式知の違いを表す「車の運転」の例

暗黙知と形式知の違いを表す例として、よく取り上げられるのが「車の運転」です。車の運転技術を習得するとき、まず教習所で座学を受け、テキストやマニュアルを通じて車の基本的な操作を学びます。ここで得られる知識は文字や図表で言語化され、他者への伝達が容易な「形式知」です。しかし、教習所で座学を受けるだけでは車の運転は上達しません。実際に車の運転を経験し、繰り返し身体で覚えることで初めて運転技術を身につけられます。この知識は言語化されておらず、個人の感覚や経験に基づいた「暗黙知」です。ナレッジマネジメントとは、この暗黙知と形式知の違いを知り、両方の特性を活かしてナレッジを効率的に共有していく取り組みを指します。

ナレッジマネジメントを実施するための2つのポイント

ナレッジマネジメントを実施するため、一橋大学名誉教授の野中郁次郎が考案したのが「SECI(セキ)モデル」と呼ばれるフレームワークです。SECIモデルを活用し、暗黙知から形式知へ、さらに形式知から暗黙知へと知識を変換していくことで、社内ナレッジを共有できます。SECIモデルを実現するには、4つの場(Ba)を創造することも大切です。ナレッジマネジメントを効率的に実施するためのポイントを2つ紹介します。

SECI(セキ)モデルを活用する

暗黙知を形式知化し、社内ナレッジとして共有する方法として、SECIモデルが挙げられます。SECIモデルは次の4つの要素から成り立っています。
共同化から内面化までの4つのフェーズを繰り返すことにより、暗黙知を形式知化し、社員一人ひとりが有用な知識やノウハウを習得できます。

共同化(Socialization)
暗黙知から暗黙知へ
同じ経験を共有し、暗黙知を暗黙知として伝える
表出化(Externalization)
暗黙知から形式知へ
共有した経験に基づいて、暗黙知を文字や図表として表現する
連結化(Combination)
形式知から形式知へ
獲得した形式知を組み合わせ、新たな形式知を生み出す
内面化(Internalization)
形式知から暗黙知へ
行動による学習を通じて、社員一人ひとりが形式知を身体で覚えていく

4つの場(Ba)を生み出す

SECIモデルのサイクルを回すために欠かせないのが「場(Ba)」です。暗黙知を形式知に変換し、社内ナレッジとして共有するためには、4つの場をデザインする必要があります。

特徴 具体例
創発する場(Originating Ba) オープンなコミュニケーションを可能にし、同じ経験や考え方の共有(共同化)を進めていくための場 飲み会、休憩室、社内SNS、フリーアドレス制など
対話する場(Dialoguing Ba) 建設的な議論が生まれやすく、対話を通じて暗黙知の形式知化(表出化)を進めていくための場 ミーティング、合宿、部署横断的なプロジェクトなど
システム場(Systemizing Ba) ICTを活用し、形式知をデータベース化して組み合わせていく(連結化)ための場 ビジネスチャットツール、社内Wiki、社内ポータル、ナレッジベースなど
実践する場(Exercising Ba) 社員一人ひとりが形式知を実践し、知識やノウハウを身体で覚えて暗黙知としていく(内面化)ための場 日常的な業務、作業場、OJTなど

暗黙知を形式知化するときの2つの注意点

暗黙知を形式知化し、ナレッジを社内で共有するとき、注意しなければならないポイントが2つあります。ナレッジの共有は紙ベースで行うのではなく、クラウドサービスなどのICTを活用して行うのが理想的です。また、音声や動画を取り入れ、五感をフル活用することで、形式知化しづらいナレッジも共有しやすくなります。

紙ベースではなくICTを活用したナレッジ共有を

暗黙知を形式知化するには、ナレッジマネジメントの4つの場を生み出す必要があると解説しました。ナレッジマネジメントの4つの場のうち、「システム場」を生み出すのに役立つのが「ナレッジ共有システム」です。ナレッジ共有システムとは、社内ナレッジを一元管理し、必要な情報を必要なときに取り出すための機能を備えたサービスを指します。紙ベースのナレッジマネジメントでは、文字や図表として形式知化したナレッジを管理し、社内で共有するのに時間がかかります。ナレッジ共有システムには、社内ナレッジをデータベース化する機能やキーワードで検索する機能があり、インターネットを通じて時間や場所を問わずアクセスできるため、より効率的にナレッジマネジメントの推進が可能です。ナレッジの共有は紙ベースではなく、ICTを活用して行いましょう。

音声や動画を取り入れ、五感をフル活用する

テレワークやリモートワークが普及し、飲み会などのオフラインでのコミュニケーションの場が減少しました。テレワーク環境での「場」の設計に役立つのが、音声や動画を活用したICTです。たとえば、Web会議システムならお互いの顔や表情がわかり、時間や場所を問わず社員同士が自由にコミュニケーションをとることができます。テレワークやリモートワークであっても、音声や動画を取り入れ、五感をフル活用することで、ナレッジマネジメントの「創発する場」を生み出すことが可能です。

【まとめ】

暗黙知と形式知の違いを知り、ナレッジマネジメントの実践を

ナレッジマネジメントを実践するには、まず暗黙知と形式知の違いを知ることが大切です。暗黙知が「ノウハウや経験など形式化して整理することが困難な知識」を指すのに対し、形式知は「文字や図表を通じて形式化できる知識」を指します。SECIモデルを活用し、暗黙知を形式知化していくことで、言語化しづらいナレッジを効率的に共有できます。テレワークやリモートワークの普及により、以前よりもオンラインでコミュニケーションをとる機会が増加しました。ナレッジ共有システムを導入し、紙ベースではなくオンラインでナレッジマネジメントを実施し、属人化を防ぎましょう。

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