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製造業でナレッジマネジメントを導入すべき理由や注意点を解説

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ものづくりの現場では、作業手順書やマニュアル、製造工程一覧図など、さまざまな文書を管理する必要があります。また、多くの企業が若手人材の確保に悩むなかで、どのようにベテラン社員の技術を伝承していくかも課題の一つです。こうした製造業ならではの課題を解決できるのが、ナレッジマネジメントと呼ばれる経営手法です。この記事では、製造業でナレッジマネジメントを導入すべき理由や、成功させるためのポイントを解説します。

製造業にナレッジマネジメントを導入すべき理由


1990年代に「知識経営」と呼ばれる経営手法が誕生してから、さまざまな業界でナレッジマネジメントが導入されてきました。製造業界も例外ではありません。製造業界はIT技術の導入によって、業務効率化や生産性の向上を実現してきました。製造業界が抱える課題を解決するには、ナレッジ共有システムを導入し、ナレッジマネジメントの考え方を浸透させる必要があります。製造業でナレッジマネジメントを導入すべき理由を3つ解説します。

文書管理を効率化できる

ものづくりの現場には、製造指示書や製造工程一覧図など、さまざまなドキュメントが存在します。事業規模が大きくなるほど、膨大な量のドキュメントを管理する仕組みが必要です。

■製造業で取り扱うドキュメント類

  • 図面
  • 仕様書
  • 開発計画書
  • 部品構成表
  • 製造指示書
  • 製造工程一覧図
  • マニュアル
  • クレーム情報

営業部門や購買部門も含めれば、見積書や製品カタログ、注文書など、さらに多くの文書管理が必要です。こうしたドキュメントには、企業が時間をかけて蓄積してきた知見やノウハウが含まれます。そのため、ナレッジマネジメントを導入し、知見やノウハウを多くの社員が活かせる仕組みを作ることが大切です。たとえば、技術マニュアルや製品マニュアルなどのマニュアル類は、いつのまにか管理がずさんになり、「現在の保管場所がわからない」、「どのデータが最新のものかわからない」といった状態になるケースもあります。ナレッジマネジメントを取り入れれば、次のような文書管理の課題を克服できます。

  • 検索システムを活用し、製品情報や技術情報をすばやく検索できる
  • マニュアルのバージョン管理を行い、最新のものをすぐに閲覧できる
  • よく使う指示書や手順書をお気に入りに登録し、探す手間を省くことができる

業務の属人化を防止できる

製造業界の課題の一つが「業務の属人化」です。とくに製造工程では、ベテラン労働者の経験やスキルに依存し、特定の社員がいないと生産力が低下してしまう企業も少なくありません。業務の属人化を防止するには、「暗黙知」を「形式知」に変換するナレッジマネジメントに取り組む必要があります。

暗黙知 ●    職人が持つ技術
●    経験が必要な作業
●    感覚的な勘やコツ
●    作業の精密性
形式知 ●    手順書
●    マニュアル
●    熟練者を撮影した写真や動画

業務の属人化を防止すれば、急な欠員が発生しても柔軟に人員を再配置し、生産力を維持することができます。それにより、一人の作業員が複数の製造工程にかかわる「多能工化」を実現することも可能です。

技術継承を強化できる

少子高齢化が進み、製造業界で働く人の平均年齢も上昇しています。ベテラン労働者がどんどん高年齢化していくなかで、若手世代にスキルやノウハウを継承する「技術継承」が急務となっています。しかし、多くの企業が技術継承の重要性を認識する一方で、技能継承が成功している企業はわずかです。労働政策研究・研修機構の調べによると、技能継承を「重要」だと考える企業が66.4%であるのに対し、技能継承が「うまくいっている」と回答した企業は5.2%にとどまっています。技能継承が必要なスキルのほとんどは、「正確・精緻に作業できる技」、「最適な加減に作業の内容や状況を調整できるカン・コツ」など、社員の体験や経験に基づく暗黙知です。[注1]
技能継承を成功させるには、暗黙知を形式知化するナレッジマネジメントの導入が欠かせません。

[注1] 労働政策研究・研修機構:若手ものづくり人材確保の厳しさが技能継承の足かせに
https://www.jil.go.jp/press/documents/20190606.pdf

製造業にナレッジマネジメントを導入するときのポイント

製造業にナレッジマネジメントを導入するときのポイントは2つあります。ナレッジマネジメントを効率的に実施するためには、文書管理システムやFAQシステムなど、ナレッジ共有システムの導入が一般的です。ナレッジ共有システムを選ぶときは、「写真や動画などの教材を利用できるか」、「事故事例を共有する機能があるか」の2点をチェックしましょう。

写真や動画を積極的に利用する

製造業で技能継承する必要がある知識・スキルは、ほとんど現場作業者の勘や感覚に基づいています。[注1]

技術継承が必要な知識やスキル、技能
正確・精緻に作業できる技 68.6%
トラブルや突発的なことが起きた時に対応できる力 65.8%
加工・作業方法を応用するなど創意工夫できる力 61.5%
最適な加減に作業の内容や状況を調整できるカン・コツ 53.2%
新しいことを発想できる独創性 29.4%

こうした知識やスキルは、紙のマニュアルだけでは細かな部分を伝えることができません。そこで役に立つのが、実際の作業手順を撮影した写真や動画です。熟練労働者の作業風景を撮影し、動画教材などでアーカイブしておけば、言語化しづらいノウハウを視覚的に伝達することができます。ナレッジ共有システムを導入する場合は、写真や動画をアップロードできるものを選びましょう。

事故事例を共有できるツールを選ぶ

ものづくりの現場では、感電や爆発、転倒や巻き込まれなど、さまざまな労働災害が発生します。ナレッジ共有システムは、過去の事故事例を共有し、現場作業者の安全を守るツールとしても活用できます。ツールによっては、動画教材だけでなく、体験型のVR教材を共有することも可能です。ナレッジ共有システムを導入する目的を整理し、自社に合ったツールを選ぶことが大切です。

製造業にナレッジマネジメントを導入するときの注意点

製造業にナレッジマネジメントを導入するときの注意点は2つあります。

  • 定期的に現場作業者の意見を聞いて改善する
  • 熟練労働者の再雇用や勤務延長を検討する

製造業におけるナレッジマネジメントは、現場の作業工程や手順などをナレッジとして共有し、業務の標準化を進めるのが目的です。ナレッジマネジメントの導入には現場作業者の協力が欠かせません。ナレッジ共有システムの使い勝手や、手順書やマニュアルの内容など、現場作業者の意見を定期的にヒアリングしながら改善していきましょう。また、熟練労働者の人数が少ない場合は、必要に応じて再雇用や勤務延長を検討するのも効果的です。若手世代への技術継承を進めるには、熟練労働者の持つ経験やスキルが必要です。実際に労働政策研究・研修機構の調べによると、69.4%の企業が技能継承のため、「再雇用や勤務延長などにより高年齢従業員に継続して勤務してもらう」と回答しています。[注1]

【まとめ】

製造業の課題を解決するには、ナレッジマネジメントの導入が必要

製造業界は「業務が属人化しやすい」、「技術継承が進まない」など、さまざまな課題を抱えています。こうした課題を解決するには、熟練労働者の持つ知識やスキルを共有する「ナレッジマネジメント」の導入が必要です。感覚的なコツや作業の精密性など、言語化しづらい「暗黙知」を共有するためには、写真や動画を積極的に活用しましょう。また、ナレッジ共有システムによっては、動画教材や体験型のVRなどを通じ、現場作業者の安全教育を行うことができます。製造業の課題を解決するためにも、ナレッジマネジメントの導入を検討しましょう。

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