社員の経験やスキルを事業活動に活かすため、「ナレッジ」や「ノウハウ」の蓄積に関心を持つ企業が増えてきました。ところで、ナレッジとノウハウにはどのような違いがあるのでしょうか。この記事では、以下の3点の内容を解説します。
- ナレッジとノウハウの違いとは?ビジネスシーンでの使い分けを解説
- ナレッジやノウハウを蓄積する2つの方法
- 蓄積したナレッジやノウハウの活用法2つ
目次
ナレッジとノウハウの違いとは?ビジネスシーンでの使い分けを解説
ビジネスシーンでは、「ナレッジ」や「ノウハウ」という言葉が頻繁に使われます。どちらも、「企業にとって有益で付加価値のある情報」を表す言葉ですが、実はこの2つには違いがあります。まずはナレッジとノウハウの定義を確認したうえで、それぞれの違いについて見ていきましょう。
ナレッジは「言葉で伝えられる」知識
ナレッジ(knowledge)は、日本語で「知識」「情報」を表す言葉です。ビジネスシーンにおいては、日々の業務に役立ったり、新しい商品やサービスの開発に貢献したりと、企業組織にとって有益な情報を意味します。ナレッジの最大の特徴は、「言葉で伝えられる」ことです。ナレッジは図や文章、数式などの手段で表現し、企業組織内で共有することができます。そのため、近年のビジネスシーンでは、有用なナレッジを蓄積し、事業活動に役立てる「ナレッジ共有システム」の導入が進んでいます。
ノウハウは「体験を通して学ぶ」知識
ノウハウ(know-how)は、日本語で「経験」「情報」を表す言葉です。ナレッジとよく似た意味を持ちますが、「仕事のノウハウ」「業務のノウハウ」といった用例のように、現場の作業や手続きに対して使われることが多い言葉です。また、ノウハウには「体験を通して学ぶ」という特徴があります。ノウハウは同じ作業や手続きを何度も繰り返し、勘やコツをつかんで身につけるものです。そのため、ノウハウを共有するのは難しく、他人に伝えるときは「見て学ぶ」「真似してもらう」といった手段を取るのが一般的です。
ナレッジとノウハウの違いは「言葉」か「体験」か
ナレッジとノウハウの違いを以下の表にまとめてみました。
特徴 | 習得方法 | |
ナレッジ | 言葉で伝えられる | 本やマニュアルから学ぶ |
ノウハウ | 体験を通して学ぶ | OJTなどの現場研修が中心 |
ナレッジは言葉で共有できますが、ノウハウは体験を通じて学ぶのが一般的です。そのため、ナレッジは「形式知」、ノウハウは「暗黙知」と言い換えられる場合もあります。有用なナレッジやノウハウを蓄積していくうえで、この2つの違いを認識しておくことが大切です。
ナレッジやノウハウを蓄積する2つの方法
ナレッジやノウハウを蓄積するためには2つの方法があります。
ナレッジマネジメントを行う
ナレッジマネジメントとは、一人ひとりの社員が持つ有用な情報を蓄積し、事業活動に活かす取り組みです。ナレッジマネジメントの目標は、社員一人ひとりが個別に持つナレッジやノウハウを「形式知」に変換し、蓄積・全社に共有することで、業務を効率化したり生産性を向上させ、組織の競争力を高めることです。
ナレッジマネジメントには、SECIモデルというフレームワークが使われます。
共同化(Socialization) | 教育・研修などによって、同じ体験を分かち合い、組織内で暗黙知(ノウハウ)を可能な限り共有する |
表出化(Externalization) | 暗黙知(ノウハウ)を言葉に置き換え、マニュアル化して、形式知(ナレッジ)に変換する |
連結化(Combination) | 言葉に置き換えた形式知(ナレッジ)を組み合わせ、新たな価値を生み出す |
内面化(Internalization) | 形式知(ナレッジ)をふたたび個人の体験に落とし込み、暗黙知(ノウハウ)として習得する |
ナレッジマネジメントには、「ナレッジ共有システム」を活用することでナレッジやノウハウを効果的に蓄積できるようになります。
「ナレッジ共有システム」を活用する
「ナレッジ共有システム」とは、ナレッジの共有を促進するためのツールです。代表的なものとして、次のようなものがあります。
社内SNS | 社内のコミュニケーションを活発化し、情報共有を促進する |
グループウェア | 情報共有だけでなく、スケジュールやワークフローなども共有でき、業務効率化が可能になる |
FAQ管理システム | 有用な情報をFAQ(よくある質問)にまとめ、社内で共有できる |
オンラインストレージ | クラウド環境を通じ、資料やファイルを保存し共有できる |
ナレッジを蓄積・共有するには、「ナレッジ共有システム」の導入が効果的です。自社の状況に合わせて、最適なツールを選びましょう。
ナレッジを蓄積・共有する2つのメリット
ナレッジを蓄積・共有すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ナレッジを活用するメリットを2つ紹介します。
業務のマニュアル化を進め、属人化を防ぐ
まずは、「暗黙知」を「形式知化」することは、業務のコツやポイントをまとめて、「業務のマニュアル化」を進めることになります。これまで、社員一人ひとりの勘や経験で行っていた業務をマニュアル化することで、業務品質のばらつきをなくし、「だれがやっても同じ成果」をあげられるようになります。新入社員や中途社員の教育を行うときにも、ナレッジやノウハウをマニュアル化していると便利です。
ナレッジの蓄積・共有を進めるもう1つのメリットは、業務の「属人化」を防げる点です。ナレッジやノウハウが共有されておらず、担当者しか特定の業務ができない(=属人化している)状態だと、担当者の不在時や退職後に業務が滞るリスクがあります。業務に必要なナレッジを蓄積・共有することで、業務品質を均質化するとともに、業務の属人化を防ぐことができます。
改善点を発見し、業務効率化を実現する
ナレッジやノウハウの共有により、担当者だけでは気づけなかった、あるいは解決が難しかった業務上の問題点が発見される可能性が高くなります。改善策が提案されれば、より質の高いナレッジ・ノウハウを蓄積することができるでしょう。複数の視点から問題点の発見と改善を繰り返せば、自然と業務の効率化につながります。
【まとめ】
ナレッジとノウハウの違いを理解し、事業活動に役立てよう
ナレッジは「言葉で伝えられる」知識、ノウハウは「体験を通して学ぶ」知識のことです。ノウハウのような個人の体験に基づく「暗黙知」を、言葉で伝えられるナレッジとしての「形式知」に変換し全体に共有する取り組みを、ナレッジマネジメントと呼びます。ナレッジを蓄積するためには、「ナレッジ共有システム」の導入が効果的です。ナレッジを蓄積・共有することで、業務の属人化を防ぎ、仕事効率化につながります。ナレッジ共有システムを導入し、社員一人ひとりが持つナレッジやノウハウの蓄積に取り組みましょう。