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ノウハウ管理の重要性とは?
考え方や管理ポイントも解説

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企業が保有する技術やノウハウは、「知的財産」として厳重に管理する必要があります。社員の内部不正やサイバー攻撃によって、会社の営業秘密が漏えいするケースも少なくありません。経済産業省の調べによると、従業員規模が3,001人以上の大企業の約3割が情報漏えいの被害に遭った可能性があることがわかっています。この記事では、技術やノウハウを管理する必要性や、ノウハウ管理と不正競争防止法の関係、ノウハウ管理のポイントを解説します。

ノウハウ管理とは?会社の知的財産を管理すること


ノウハウ管理とは、会社の発明や独自に開発した技術などの「知的財産」を管理し、外部に漏えいしないように保護することを指します。社員による内部不正や外部からのサイバー攻撃を受けた場合、ノウハウが漏えいし、同業他社に流出するリスクがあります。ノウハウ管理の重要性や漏えいした場合のリスク、特許権で保護する場合のメリット・デメリットを解説します。

ノウハウは会社にとっての「知的財産」

企業が保有する技術や機密情報などのノウハウは、会社にとって大切な「知的財産」です。知的財産の定義は、知的財産基本法第2条で定められています。[注1]

この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。

ノウハウは、「営業秘密」や「企業秘密」と呼ばれる場合もあります。具体的には、以下のような技術上のノウハウや営業上のノウハウが、「営業秘密」、「企業秘密」に該当します。[注2]

技術上のノウハウ ノウハウとして秘匿することを決めた発明、製造技術・製造ノウハウ、設計図・設計図書、製品仕様書、製造原価計算書、各種実験データ、製品開発研究レポート
営業上のノウハウ 顧客名簿・顧客情報、販売マニュアル、仕入先リスト、販売価格の要件、経理・財務データ(未公表のもの)、市場動向調査報告書、営業戦略の立案・企画書

[注1]e-Gov法令検索|知的財産基本
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=414AC0000000122_20210901_503AC0000000036
[注2]東京都知的財産総合センター:中小企業経営者のためのノウハウの戦略的管理マニュアル
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/manual/knowhow/knowhow_all.pdf

ノウハウ管理に取り組む重要性

こうしたノウハウを外部に漏えいしないよう秘匿し、厳重に管理することを「ノウハウ管理」と呼びます。そもそも、なぜノウハウ管理が必要なのでしょうか。企業が発明や製造技術などの知的財産を手にした場合、「ノウハウとして秘匿する」「特許権で保護する」の2つの方法で管理することになります。[注3]
知的財産をノウハウとして秘匿すれば、他の企業に知られたり、模倣されたりすることはありません。社員による内部不正や、サイバー攻撃による情報漏えいのリスクがあるため、ノウハウの流出を防ぐセキュリティ対策を講じ、厳重に管理する必要があります。とくに情報漏えいのルートとしてもっとも多いのが、自社の社員による情報漏えいです。[注3]

情報漏えいルート 割合
現職従業員等のミスによる漏えい 43.8%
中途退職者(正規社員)による漏えい 24.8%
取引先や共同研究先を経由した漏えい 11.4%
現職従業員等による具体的な動機をもった漏えい 7.6%
外部からの社内ネットワークへの侵入に起因する漏えい 4.8%

従業員によるミスや、退職後の情報の取り扱い、取引先や外部パートナー、意図的な内部不正など、さまざまなルートで情報漏えいが起きています。ノウハウが外部に流出すれば、競合他社が模倣し、競争優位性を失ってしまう可能性があります。

[注3]経済産業省:営業秘密の保護・活用について
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/1706tradesec.pdf

ノウハウは慎重に管理して必要な場合は特許権を取得する

知的財産をノウハウとして秘匿する方法のほか、特許権によって保護する方法もあります。特許権は独占排他権であるため、自社の知的財産を強力に保護することで、不正利用を防止できます。一方で、知的財産の内容が他の企業にも公開され、不正利用に当たらない範囲で模倣されるリスクがあります。知的財産をノウハウとして秘匿するか、特許権で保護するか、慎重に検討しましょう。

ノウハウに関連した暗黙知と形式知とは

ノウハウに関連したキーワードとして「暗黙知」と「形式知」があります。
暗黙知とは、たとえば車の運転のように、個人の感覚や経験に基づくノウハウのことです。一方、形式知は言語化されたノウハウを指します。車の運転の例では、操作方法を言語化したマニュアルが形式知に当たります。感覚や経験に基づく暗黙知を言語化し、形式知に変換することで、ノウハウとして蓄積することができます。

ノウハウ管理のポイント

ノウハウは厳重に管理する必要があります。営業秘密や企業秘密の流出を避けるだけでなく、不正競争防止法の保護を受けるためにも、一定の基準に沿ったノウハウ管理が求められます。経済産業省の営業秘密管理指針によると、ノウハウ管理は「法的保護レベル」に沿って行う必要があります。[注4]

営業秘密保有企業の秘密管理意思が秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され、当該秘密管理意思に対する従業員等の認識可能性が確保される必要。

つまり、ノウハウに接する社員に対し、その情報が営業秘密や企業秘密だとわかるような合理的手段をとることが大切です。たとえば、以下の手段が該当します。

  • 書類に㊙マークを表示する
  • フロッピーディスクに持ち出し禁止シールを貼付する
  • アクセス可能な者を制限する
  • 化体物(金型やサンプル)をリスト化する
  • 秘密保持契約を締結する
  • 施錠付きの部屋に保管する

[注4]経済産業省:営業秘密の保護・活用について
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/1706tradesec.pdf

ノウハウ管理に役立つツールの選定ポイント

ノウハウは厳重に管理するだけでなく、形式知として社内で共有し、有効活用する必要があります。社内で共有する際は、社内WikiやFAQ管理システム、チャットボットシステムなどのノウハウ管理ツールの導入が便利です。

セキュリティ面 ・アクセス制限が可能か
・通信の暗号化が行われているか
・バックアップデータがとられているか
導入実績 ・導入実績が豊富か
・自社と業態が近い企業で導入されているか
操作しやすさ ・直感的に操作できるか
・ITリテラシーが低い従業員でも操作できるか
・デモや無料トライアルで操作感を確かめられるか

ノウハウ管理ツールを導入すれば、ノウハウを厳重に管理したり、社内で安全に共有したりすることができます。ノウハウ管理ツールを新しく導入する際は、セキュリティ対策の面だけでなく、利便性や導入実績などを総合的に比較することが大切です。自社の目的とマッチしたツールを選びましょう。

【まとめ】

ノウハウ管理の重要性を知り、営業秘密を慎重に管理しよう

企業が持つ技術やノウハウは、厳格に管理する必要がある「知的財産」です。ノウハウが外部に漏えいすれば、他社に模倣され、業績の悪化や特許出願による権利化につながる恐れがあります。不正競争防止法による保護を受けるためにも、ノウハウをきちんと管理することが大切です。ノウハウ管理のポイントは「アクセスできる人の制限」、「セキュリティの強化」、「取り扱いのルール策定」の3つです。FAQ管理システムなどのノウハウ管理ツールを導入する場合は、セキュリティ面などを事前に比較し、自社に合ったものを選びましょう。

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