端末の操作方法やソフトウェアの不具合など、社内の問い合わせ窓口となるのが社内ヘルプデスクです。似たような問い合わせを社内FAQとしてまとめておくことで、問い合わせ件数を減らし、社内ヘルプデスクの業務負担を軽減することができます。しかし、「社内FAQを社員が利用しない」、「問い合わせ件数が減らない」など、社内FAQの活用がなかなかうまくいかない企業も存在します。この記事では、社内FAQの運用やうまくいかない原因、社内FAQの成功事例やポイントを解説します。
目次
社内FAQの成功事例
社内FAQを導入すれば、社員が疑問や悩みを自己解決できるため、社内ヘルプデスクやサポートデスクへの問い合わせ件数を削減できます。また、間接部門の業務負担を減らし、よりコアな業務にリソースを集中させることができます。
しかし、社内FAQの運用が思うようにいかない企業も少なくありません。他社の事例を参考にして、社内FAQの運用方法を改善しましょう。社内FAQの成功事例を3つ紹介します。
FAQとチャットボットで業務負担を軽減した事例
サッポロホールディングス株式会社には、経営資源の効率化のためサッポログループを支える間接部門(人事や総務、経理など)が集約されています。間接部門の業務の1つが、グループ全体で7,000人を超える社員からの問い合わせ対応です。問い合わせ対応は間接部門の業務全体の3割〜4割を占め、労働生産性の悪化の一因となっていました。また、間接部門の平均年齢は40代後半に達するなどベテランが多く、ベテランの持つナレッジをどうやって次世代の社員に継承するかが課題となっていました。
「問い合わせ件数の削減」、「ナレッジの共有」の2つの課題を解決するため、サッポロホールディングス株式会社が取り組んだのが社内FAQの構築です。まずは人事や総務、経理などの部門のFAQを精査したところ、各部門がバラバラにFAQを作成しており、かつメンテナンスも不十分な状態であることがわかりました。
そこでFAQ管理システムを導入し、過去の問い合わせ履歴をベースにFAQデータベースを構築しました。問い合わせ履歴をデータベースに登録する作業は、問い合わせを受けた人ではなく、FAQプロジェクトチームにアウトソースすることで業務負担を軽減しました。また、チャットで対話可能なAIチャットボットを組み合わせ、社員が気軽に問い合わせできる仕組みづくりに取り組んでいます。結果として、以下の課題を解決することができました。
- 問い合わせ件数の45%をAIチャットボットが解決し、間接部門の業務負担を軽減できた
- Windows 10への切り替えの際、通常はヘルプデスクを4名増員するところ、FAQを活用することで2名の増員で対応できた
FAQの一元管理で問い合わせの効率化を実現した事例
ネオファースト生命保険株式会社では、お客様向けのFAQサイトのほか、代理店向けや営業担当向けの社内FAQを構築しています。従来は、お客様向けのFAQサイトと社内FAQを別のツールで作成していたため、管理工数の多さが課題となっていました。そこで、1つのツールで複数のFAQを作成できるFAQ管理システムへ移行したところ、社外向け・社内向けのFAQページを一元管理でき、問い合わせ対応がスピードアップできました。
また、同社ではFAQサイトを社内の情報ポータルとしても活用しています。これまでは毎朝の情報伝達をOutlookで行っていましたが、「つい見るのを忘れてしまう」、「見に行かない社員が多い」といった課題がありました。そこで、社員が毎朝チェックしている社内FAQで情報伝達を行ったところ、伝達漏れがなくなり、出社していない社員もスムーズに伝達事項を確認できるようになりました。
FAQ管理システムで社内FAQの改善を行った事例
株式会社ノーリツでは、社内向けのFAQを内製ツールで作成し、社内からの問い合わせに対応していました。しかし、社内FAQの件数が4万件まで膨らみ、閲覧数などのデータも自動で取得する機能がありませんでした。そのため、情報更新やメンテナンスなどの管理工数が肥大化し、社内FAQの運用に課題を抱えていました。また、古いFAQや重複したFAQも多く、社員の問題解決につながっていませんでした。
そこで、同社はFAQ管理システムを導入し、FAQページの閲覧数や評価数などを数値化して再評価しました。よく閲覧されているFAQとあまり閲覧されていないFAQを区別し、FAQの削除や改善に少しずつ取り組んだ結果、社内FAQを2万件まで減らすことができました。他にも従来のテキストだけのFAQから、画像やリンク付きのFAQに刷新し、視覚的にわかりやすいFAQページにブラッシュアップできました。単なる問い合わせ対応ツールとしてだけでなく、全社的なナレッジ共有ツールや、新入社員向けの教育ツールとしても活用が進んでいます。
社内FAQが失敗する原因
なぜ社内FAQの運用がうまくいかないのでしょうか。「社内FAQを作成したのに浸透しない」、「問い合わせ件数が減らない」など、社内FAQが失敗するのには原因があります。
FAQコンテンツを更新できていない
社内FAQの情報が古いままだと、社員が疑問や悩みを解決できず、利用者の減少につながってしまいます。FAQサイトは定期的にメンテナンスを実施し、古い情報を更新したり、ミスや間違いを修正したりすることが大切です。
更新すべきFAQコンテンツは、閲覧数や評価数などのデータを分析することで見つけられます。たとえば、他のページよりも評価数が低い場合、そのFAQが問題解決につながっていないことがわかります。
FAQサイトが社内に浸透していない
社内FAQを利用してもらうためには、利用目的やメリットを社内に周知し、浸透させる必要があります。FAQページの見方やコンテンツの検索方法など、社内FAQの使い方を丁寧に説明することも大切です。
また、社内FAQの改善には社員一人ひとりの協力が欠かせません。社内FAQを利用していて気づいたことや不満に感じたことを意見してもらい、「全員でFAQサイトを作り上げる」体制を整えることで、社内FAQを積極的に利用する風土を作ることができます。
社内FAQを成功させるためのコツ
社内FAQの運用を成功させるためのコツは2つあります。
- 運用フローを明確に決める
- 担当者・推進者を決める
まずはFAQの追加や承認、公開作業などの全プロセスをワークフロー化し、チーム全体で共有しましょう。FAQ管理システムのワークフロー機能を活用すると簡単に承認フローを作ることができます。また、FAQコンテンツの作成や更新作業は、間接部門の業務を圧迫します。社内FAQの担当者・推進者を決め、FAQプロジェクトチームを中心に運用することで、他の部門の業務負担を軽減できます。
【まとめ】
社内FAQが失敗するのには原因がある!成功事例を参考に運用しよう
社内FAQが失敗する理由は、「FAQコンテンツの更新ができていない」、「FAQサイトが社内に浸透していない」の2つです。社内FAQの運用がうまくいかない場合は、他社の成功事例を参考にしながら運用方法を見直しましょう。社内FAQを成功させるためのコツは2つあります。FAQの運用プロセスをワークフロー化し、チーム全体で共有しましょう。また、他の部門の負担軽減のため、担当者・推進者を中心として社内FAQを運用することが大切です。