CX(カスタマーエクスペリエンス)は、日本語で「顧客体験価値」と訳されます。近年、市場に量産品や類似サービスがあふれ、価格、機能、品質、ブランドに付加価値をつけづらくなった結果、市場における競合優位性を確保するのが難しくなりました。こうした「一般化(コモディティ化)」を避けるため、企業はCXに着目し、自社の顧客満足度や企業ロイヤルティの向上、他社との差別化を図っています。顧客と直接コミュニケーションをとるコールセンターは、CX向上の拠点の1つとして多くの企業で重要視されています。この記事では、CXを重視すべき理由や、CX向上の成功事例、CXを高めるために意識すべきポイントについてわかりやすく解説します。
目次
多くの企業でCXが重視される2つの理由
コールセンターは企業のCX向上の拠点として、新たな役割を与えられつつあります。なぜ、多くの企業がCXを重視しているのでしょうか。その背景として、市場の一般化が進み、商品開発による競争優位性を確保するのが難しくなった点があげられます。CX向上によって得られるメリットを2つ紹介します。
市場の一般化が進んだため
市場の一般化(コモディティ化)とは、市場に競合他社が参入し、量産品や類似サービスが大量に投入された結果、競合優位性の確保が難しくなる現象を指します。仮に商品開発によって新機能を追加しても、競合他社が同様の商品をすぐに投入するため、価格、機能、品質、ブランドなどの付加価値によって差別化することが難しくなりました。こうした市場の一般化が進むなかで、他社が真似しづらく差別化する要素として注目を集めているのがCXです。優れたCXを提供し続けるためには、顧客の声(VOC)の分析や戦略の策定、顧客体験のデザインといった、組織的な能力(ケイパビリティ)が求められます。商品開発の面で競争優位性を確保するのが難しくなった今、CXの向上に向けてガバナンスを強化し、他社と差別化しようとする企業が増えています。
購買意欲の3分の2は「口コミ」で作られるため
顧客の購買意欲の3分の2は、他の顧客の「口コミ」で作られています。顧客に優れた体験を提供し、口コミを発信してもらえば、その口コミが別の顧客を惹きつけ、連鎖的に商品やサービスの購買行動につながります。McKinsey & Companyによると、顧客が商品の購入を検討するフェーズのうち、3分の2を占めているのがインターネット上のレビューや、友人、家族など周囲の人による口コミであることがわかっています。[注1]
CXを高めることで、好意的な口コミがさらなる口コミを呼び、連鎖的に商品やサービスの購買意欲をかきたて、購買行動につながります。このように「市場における競争優位性の確保」と「顧客の購買意欲の最大化」の2点の観点から、CX向上は企業の競争戦略において欠かせないものとなりつつあります。
[注1] McKinsey & Company:The consumer decision journey
https://www.mckinsey.com/business-functions/marketing-and-sales/our-insights/the-consumer-decision-journey
【業種別】CX向上の成功事例
それでは、CX向上に向けて企業がどのような施策を行っているのか、成功事例を紐解いてみましょう。CX向上の成功事例を業種別に3つ紹介します。
【中古車販売店】チャットボットを導入し、顧客体験を向上させた事例
中古車販売店の事例では、顧客の声を分析した結果、実店舗に来店する顧客の半数が、あらかじめ自社サイトで情報収集を行っていたことがわかりました。そこで、店舗以外の新たな顧客接点(タッチポイント)を活かし、顧客体験を向上させるため、自社サイト内にチャットボットを設置しました。チャットボットとは、会話形式でユーザーの問い合わせに自動応対するツールです。こちらの事例では、チャットボットで顧客の問い合わせの種類を分類し、スタッフが有人チャットで対応を行うことで、Webサイト上の顧客体験を大きく改善しました。結果として、チャットボット導入前よりも利益が10%増大し、売上アップにつながりました。
【航空業界】未来のビジョンを持ち、心に残る旅行体験を実現した事例
米国の航空会社の事例では、顧客の心に残る旅行体験を提供するため、NPS(ネットプロモータースコア)を活用し、顧客の声を収集しました。NPSを活用すれば、良い体験をした顧客と悪い体験をした顧客を分類し、自社のサービスの何が良かったか、何が悪かったかを客観的に測定できます。顧客の声に基づき、地道にサービス改善を続けた結果、たとえば「遠い地域に住み、犬を飼いたがっていた父親に自社の飛行機を通じて犬を届ける」といった顧客体験を提供することに成功しました。当事者の家族からも感謝の声が寄せられ、現場のスタッフのモチベーションアップにもつながっています。
【スポーツ用品メーカー】OMO戦略を実施し、顧客の利便性を改善した事例
米国のスポーツ用品メーカーの事例では、顧客の購買体験を改善するため、リアル店舗とオンラインショップを融合するOMO(Online Merges with Offline)に取り組みました。たとえば、店舗に訪れた顧客がスマートフォンやタブレットでアプリを使い、商品の詳しい情報を入手したり、その場で決済を行うことが可能です。顧客からのフィードバックを元にCXの改善を続け、2019年には日本でも店舗を展開し、オンラインとオフラインを融合した新しい購買体験を提供しています。
CXを向上させるために意識したい2つのポイント
これらの成功事例を踏まえて、CXを向上させるためにはどのような点を意識すべきでしょうか。ポイントとなるのは、「顧客の自己解決を促進すること」、「ITツールの活用などにより、顧客の声(VOC)を収集すること」の2点です。
FAQページを作成し、顧客の自己解決を促進する
スマートフォンやタブレットなどの情報収集ツールが普及した結果、顧客が理想とするCXも大きく変化しました。顧客の多くは、問い合わせ行動によって問題を解決するよりも、「自己解決」を望むことがわかっています。顧客の疑問や悩みを自己解決できるツールとして、FAQサイトがあります。FAQサイトとは、よくある質問とその答えをQ&A形式でまとめたものです。多くの企業がFAQ管理システムを導入し、利便性の高いFAQサイトの公開に向けて取り組んでいます。
▶︎ 250社以上の導入実績!ナレッジ共有&見つかるFAQ管理サービス「i-ask」
ITツールを導入し、顧客の声を収集する
顧客にとって理想の体験を提供するには、まず顧客の声(VOC)を収集し、顧客のニーズをつかむことが大切です。そのために役立つのが、顧客と直接コミュニケーションを行うコールセンターです。コールセンターの問い合わせ履歴を活用したり、現場のオペレーターにヒアリングを行い、顧客の声に耳を傾けましょう。顧客の声の収集を効率化するには、テキストマイニングツールや音声認識システムなどのITツールの導入が便利です。
【まとめ】
コールセンターを活用し、CXの向上を
近年、CX(カスタマーエクスペリエンス)向上の重要拠点として、コールセンターを活用する企業が増えています。市場の一般化が進み、類似商品が大量に投入されるなかで、商品開発のみに頼って競合優位性を確保するのは困難です。そこで、企業は良質な顧客体験を提供し、他社と差別化する戦略に重点を置いています。CX向上のポイントは、「顧客の自己解決を促進すること」、「顧客の声(VOC)を収集すること」の2点です。FAQ管理システムやチャットボットシステムなどのITツールを活用し、CX向上に向けて取り組みましょう。