コールセンター業界では、慢性的な人手不足が課題となっています。コールセンタージャパン・ドットコムの2019年の調査によると、「コールセンター運営上の課題」としてもっとも回答が多かったのが、「オペレータの採用・育成(51.4%)」でした。[注1]
人手不足により、限られたオペレーターで顧客対応せざるを得ないため、多くのコールセンターが問い合わせ業務の自動化や効率化に向けて取り組んでいます。そのなかでも、チャット画面でリアルタイムに問い合わせ対応を行う「チャットサポート」は、コールセンターと顧客の双方にメリットのあるサポート方法です。この記事では、チャットサポートのメリットや活用方法についてわかりやすく解説します。
[注1] コールセンタージャパン・ドットコム:採用難対策、AI導入、クラウド化──210社の実態に見る国内コールセンターの『現在地』
https://callcenter-japan.com/magazine/4226.html
目次
チャットサポートとは?チャット画面を通じて問い合わせ対応すること
チャットサポートとは、ブラウザやアプリに表示されたチャット画面を通じ、リアルタイムに問い合わせ対応を行うサポート方法です。チャット画面では文章入力のほか、画像や動画、自社サイトのURLの送付などにより、情報提供を行うことが可能です。また、チャットサポートツールの中には、チャットボットを使用し、問い合わせ対応を自動化、あるいは半自動化できる製品もあります。チャットサポートツールを導入することで、従来の電話対応やメール対応と比べて、カスタマーサポートにかかる時間を大幅に短縮でき、業務効率化にもつながります。また、自社サイトやコーポレートサイトにチャットサポート窓口への導線を作ることで、顧客との接点を増やし、サイト離脱を防止する効果があります。
チャットサポートと電話サポートの違いは?メリットとデメリットを比較
これまで主流だった電話サポートと比べて、チャットサポートにはどのような強みがあるのでしょうか。チャットサポートのメリットとデメリットを比較します。
待ち時間が短く、顧客満足度の向上につながる
従来の電話サポートには、なかなかオペレーターにつながらない「あふれ呼」や「待ち呼」の問題がありました。そうした問題を抱えるコールセンターでは、応答率や放棄呼率をKPIに設定し、あふれ呼を減らす取り組みを行ってきましたが、電話回線数やオペレーター数には限界があり、あふれ呼を完全になくすのは困難でした。しかし、そもそも電話回線を使わないチャットサポートなら、電話回線が混み合っていても顧客を待たせる心配がありません。また、文章入力がメインのチャットサポートでは、1人のオペレーターが複数の問い合わせに同時に対応できるため、「なかなか電話がつながらない」といった顧客のストレスを緩和でき、顧客満足度の向上につながります。
電話サポートと比べてコミュニケーションに制限がある
一方、チャットサポートは文章入力での対応がメインのため、電話サポートよりもコミュニケーション手段に制限があります。電話サポートなら、声の抑揚や言葉遣いで感情を表現し、温かみのあるカスタマーサポートを提供できます。とくにクレーム対応などの場合、チャットより電話でのコミュニケーションの方が、顧客の不満や怒りをクールダウンさせられる可能性が高まります。また、中高年層やシニア層の中には、チャットより電話でのコミュニケーションを好む方も少なくありません。チャットサポートと電話サポートの得意分野を知り、問い合わせの種類や自社の客層に応じてチャネルを使い分けることが、顧客満足度向上の鍵です。
チャットサポートを導入する2つの方法
チャットサポートには主に3種類あり、有人のオペレーターがチャットを行うもの、AIなどによる自動で問い合わせ対応を行うもの、両方をハイブリッドで利用できるものがあります。ここでは、チャットサポートを導入するときの選択肢を2つ紹介します。
有人対応型のチャットサポートツールを導入する
有人対応型のチャットサポートツールは、文字通り有人のオペレーターがチャットで問い合わせ対応を行います。AIではなくオペレーターが対応するため、正確に相手の意図を汲み取り、適切に回答できます。しかし、電話サポートよりリスクは低いものの、チャットへの問い合わせが集中すると、オペレーターの数が足りなくなる可能性があります。有人対応型のチャットサポートツールを導入する場合は、よくある質問をまとめたFAQサイトを構築し、問い合わせを行う前にまずはFAQを見てもらうような工夫や、特定のページでのみチャットが立ち上がるようにするなど、問い合わせ数をコントロールできるような施策も大切です。
チャットボットシステムを導入する
問い合わせ対応を自動化できるのが、チャットボットシステムです。チャットボットがオペレーターの代わりに問い合わせ対応を行うため、現場の業務負担を減らせます。チャットボットには、「AI(人工知能)搭載型」と「シナリオ/ツリー構造型」の2種類あります。AI搭載型なら、機械学習により曖昧な表現や表記ゆれに対応できるため、的確な問い合わせ対応が可能です。シナリオ/ツリー構造型の場合、事前に設定したシナリオの範囲内でしか回答できませんが、導入コストや利用料金がより安価です。それぞれの特徴と強みを知り、自社の課題に合ったシステムを選ぶことが大事です。
チャットサポートを上手く活用する2つのポイント
チャットサポートツールを有効活用するには、導入後の運用プロセスが大切です。チャットサポートを導入し、顧客満足度を高めるための2つのポイントを解説します。
電話サポートとチャットサポートを併用する
前項で述べた通り、電話サポートとチャットサポートには、それぞれメリットとデメリットがあります。業務効率化のため、問い合わせ対応業務の全てをチャットサポートに代替するのではなく、お互いの強みを活かす形で電話サポートとチャットサポートを併用するのがおすすめです。電話サポートの場合、1対1のコミュニケーションである点や、温かみのあるサポート対応が可能な点を活かし、複雑な問い合わせや、温度感や緊急性の高いクレーム対応に適しています。逆にチャットサポートは、定型的な問い合わせや、業務時間外の問い合わせに向いています。電話サポートとチャットサポートの強みを生かし、複数チャネルでのサポート体制を構築しましょう。
チャットサポートツールの効果測定を行う
チャットサポートツールの導入にあたってKPIを設定し、導入後の効果測定を行いましょう。チャットサポートの評価に使われるKPIとして、「対応件数」、「利用率」、「コンバージョン率(CVR)」、「問題解決率」などがあります。
対応件数 | チャットサポートで顧客対応を行った件数 |
利用率 | Webサイトの訪問者のうち、チャットサポートを利用したユーザーの割合 |
コンバージョン率(CVR) | チャットサポートを利用したユーザーのうち、商品購入や資料請求などの行動を起こした割合 |
問題解決率 | チャットサポートを利用したユーザーのうち、アンケートなどでサポート対応の満足度が高い、問題が解決したと回答した割合 |
このように、さまざまな指標を用いてチャットサポートの効果測定を行うことで、現状の問題点を見える化し、サポート対応を改善することが可能です。
【まとめ】
チャットサポートのメリットとデメリットを知り、自社に合ったツールを選ぼう
チャットサポートとは、ブラウザやアプリのチャット画面を通じ、リアルタイムに問い合わせ対応を行う方法です。チャットサポートには、顧客の待ち時間が短く、チャットボットなら電話サポートのようにあふれ呼が発生しないというメリットがある一方で、コミュニケーション手段に制限があるというデメリットもあります。チャットサポートツールには、有人対応型やチャットボット型、ハイブリット型のものがあります。自社の課題に合ったツールを選ぶことが、顧客満足度向上の近道です。