コールセンター業界は、慢性的なオペレーター不足や応対品質の低下など、さまざまな課題を抱えています。こうした課題を解決するには、オペレーター間のナレッジ共有の促進や、デジタルツールを用いた業務効率化が必要不可欠です。コールセンターの業務効率化に役立つシステムとして、たとえばFAQ管理システムやチャットボットシステム、クラウドPBX(電話交換機)などが挙げられます。この記事では、コールセンターの業務効率化がうまくいかない原因や、業務効率化を実現するためのポイントをわかりやすく解説します。
目次
コールセンターの業務効率化がうまく進まない原因
なぜコールセンターの業務効率化はうまくいかないのでしょうか。その背景には、慢性的なオペレーター不足や、問い合わせチャネルの多様化などの問題があります。ここでは、コールセンターの業務効率化がうまく進まない原因を2つ紹介します。
慢性的なオペレーター不足
コールセンター業界の課題の一つが、慢性的なオペレーター不足です。実際に「センター運営上の課題は何か」というアンケートに対し、54.4%のコールセンターが「オペレーターの採用・育成」、35.3%のコールセンターが「オペレーターの定着率向上」と回答しています。[注1]
オペレーターの採用や定着率向上に取り組むとともに、限られた人員でセンターを運営していくための業務効率化の実現が急務となっています。
[注1] 富士通:コンタクトセンターが抱える最大の課題とは
https://www.fujitsu.com/jp/services/application-services/enterprise-applications/crm/cp/201803/pdf/cp_crm_part1_ContactCenterTask.pdf
問い合わせチャネルの多様化
オペレーター不足が深刻化する一方で、現場の業務量は増加傾向にあります。その背景にあるのが「問い合わせチャネルの多様化」です。インターネットで情報収集する人が増えた結果、従来の電話応対に加えて、チャットやWebフォーム、SNSなど、問い合わせチャネルが急速に多様化しました。そのため、オペレーターの業務量も増加し、さらに離職率が上昇するという悪循環が生まれています。
コールセンターの業務を効率化するポイント
それでは、どのようにコールセンター業務を効率化すればよいのでしょうか。コールセンターの業務を効率化するポイントは2つあります。
- 社員研修などを強化し、ナレッジ共有に取り組む
- デジタルツールを導入する
コールセンターの業務効率化がうまく進まない原因の1つは「平均処理時間(AHT/Average Handling Time)の増加」にあります。社員研修の強化や、オペレーター向けのマニュアルの見直しなどの手段で、顧客対応に必要なノウハウの共有に取り組みましょう。また、業務の自動化や顧客対応のオンライン化など、デジタルツールの導入も効果的です。
社員研修などを強化し、ナレッジ共有に取り組む
コールセンターの業務効率化がどれくらい進んでいるかは、オペレーターの平均処理時間(AHT)を調べるとわかります。
平均処理時間とは、電話対応にかかった時間の平均(平均通話時間)と、電話対応後の後処理にかかった時間の平均(平均後処理時間)を足した指標です。
平均処理時間(AHT) = 平均通話時間 + 平均後処理時間
平均処理時間を短縮できていない場合、以下のようにコールセンターのナレッジ共有の方法を見直しましょう。
- 定期的にオペレーターを対象としたスキルアップ研修を行っているか
- オペレーター向けのマニュアルは最新の情報に基づいているか
- トークスクリプトをオペレーター間で共有できているか
- メール返信用のテンプレートを共有しているか
- 類似の問い合わせを検索する仕組みがあるか
問い合わせ対応のナレッジを共有すれば、オペレーターの生産性を高めるだけでなく、新人オペレーターのパフォーマンス向上にもつながります。
デジタルツールを導入する
コールセンターの業務効率化なら、デジタルツールの導入がおすすめです。データの入力や転記など、定型的な業務はデジタルツールを導入することで自動化できます。業務の自動化につながるデジタルツールの例として、単純作業をソフトウェアロボットが代替するRPA(Robotic Process Automation)や、音声データなどを自動でテキストデータに変換する音声認識エンジンなどが挙げられます。そのほか、コールセンターの業務効率化に役立つシステムは次の項目で解説します。
コールセンターの業務効率化に役立つシステム
コールセンターの業務効率化に役立つシステムは3つあります。
FAQ管理システム | よくある問い合わせをQ&A形式で掲載し、顧客の問い合わせを未然に解決するシステム |
チャットボットシステム | 顧客の問い合わせに対し、24時間365日チャットで応対できるシステム |
クラウドPBX | コールセンターの電話回線をクラウドで構築し、時間や場所を選ばず顧客に対応できるシステム |
FAQ管理システム、チャットボットシステム、クラウドPBXのなかから、コールセンターの課題に合ったシステムを導入しましょう。
FAQ管理システム
FAQ管理システムは、問い合わせ頻度が高い質問をまとめ、Q&A形式で公開するためのツールです。FAQ管理システムを導入すれば、顧客が求める答えを自分で検索し、疑問や悩みを自己解決することができます。コールセンターへの入電が減少し、オペレーターの業務負担を減らすことが可能です。
また、FAQ管理システムはオペレーター間のナレッジ共有ツールとしても活用できます。よくある問い合わせとその回答をFAQページにまとめておけば、似たような問い合わせがあった際に参照し、スムーズに対応できます。
チャットボットシステム
チャットボットシステムはFAQ管理システムと同様に顧客対応を自動化するためのツールです。チャットボットシステムとFAQ管理システムには以下のような違いがあります。
特徴 | |
FAQ管理システム | ● 顧客が自分で知りたい情報を探す ● 顧客側に情報リテラシーが求められる ● 想定される質問の種類が多くても対応できる |
チャットボットシステム | ● プログラムが顧客の質問に自動で応答する ● チャット感覚で気軽に問い合わせできる ● 想定される質問の種類が多いとシステムの運用が難しい |
チャットボットシステムかFAQ管理システムか迷う場合は、想定される質問の量によって選びましょう。目安として、質問の件数が300件を超える場合はFAQ管理システム、それ以下の場合はチャットボットシステムの運用が適しています。
クラウドPBX
クラウドPBXは、文字通りコールセンター内のPBX(交換機)をクラウド化するためのツールです。従来のPBXと違い、インターネット環境があればいつでもどこでも電話で応対できます。PCだけでなく、スマートフォンなどのモバイル端末で電話に応対することも可能です。クラウドPBXを導入すれば、テレワークやリモートワークを導入し、オペレーターのワークライフバランスを改善できます。子育てや介護など、フルタイムで働くのが難しい人でもオペレーターとして働けるため、オペレーター不足の解消にもつながります。
【まとめ】
コールセンターの業務効率化を進めるには、FAQ管理システムなどのデジタルツールの導入が必要!
コールセンターの業務効率化は重要な経営課題の一つです。コールセンター業界の採用難や離職率の高さにより、オペレーターの人数が不足しています。問い合わせチャネルが多様化し、オペレーターの業務負担がますます増えるなか、限られた人員でコールセンターを運営するには業務効率化が欠かせません。コールセンターの業務効率化を実現するには、FAQ管理システムやチャットボットシステム、電話網をインターネットで構築するクラウドPBXなど、デジタルツールの導入がおすすめです。コールセンターの業務効率化がうまく進まない原因を知り、FAQ管理システムなどのデジタルツールを有効活用しましょう。